汚染地を北谷町が買い取りへ 米軍基地返還地からダイオキシン 政府の補償は不透明


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
米軍返還跡地から高濃度のダイオキシンを含む廃棄物が見つかった問題で、地権者から土地を買い取る方針を固めた北谷町

 沖縄県北谷町上勢頭の米軍基地返還跡地で住宅を建てようとしたところ、高濃度のダイオキシンを含む廃棄物が見つかった問題で、町が地権者から町予算で土地を買い取る方針を固めたことが1日までに分かった。2020年度予算案に購入費として約5400万円を計上している。政府が補償する見通しは立っていない。識者は「米軍基地返還跡地を巡る法の空白により、地権者が長らく不利益を被った。今後も県内で起こり得る問題だ」と指摘している。

 この土地は1996年に米軍嘉手納基地の一部が返還され、町が区画整理を実施した。別の地域に公園を造る際、立ち退き対象の町民に対し、代わりの土地として上勢頭の土地の一部を提供してきた。

 町が買い取り方針を決めた当該土地の地権者は町の事業に協力して立ち退いた一人。11年、住宅建設の際に地中から廃棄物が見つかり、その後、法定の基準を超えるダイオキシンが検出された。地権者は廃棄物を見つけた当初から町に対応を求めてきた。

 地権者は住宅建設を断念し、借家での居住を余儀なくされている。今後、土地利用が見込めないことや地権者が心身的な問題を抱えていることから、町が土地を買い取ることになった。用途は未定。

 町の担当者は「居住できなくなり実害があることから、緊急性が高いと判断した。地権者の意向にも沿っている」と、あくまで特別な措置だとした。同じように廃棄物が混ざっている別の地権者の土地で不利益が生じた場合については「防衛局に対応するよう求めている」と強調した。

 沖縄防衛局は本紙の取材に対し「当該土地を買い取る予定はない」と答えた一方で「町が被る損失の取り扱いについては町と協議中だ」と説明した。
(明真南斗、新垣若菜、下地美夏子)