在沖米海兵隊のCH53E大型輸送ヘリコプターが25日、つり下げ輸送中の射撃用標的を読谷村沖の海上に落下させた。その2日後には、県や自治体に説明のないまま同型機が読谷村の米陸軍トリイ通信施設でフォークリフトをつり下げて飛行した。「地元軽視」と批判が高まる米軍の運用や航空法の適用されない現状、県や政府が取るべき対応について日米地位協定に詳しい識者2人に聞いた。
米軍に国内法の適応を 前泊博盛・沖国大教授
国内法の適用を免除していること自体が主権国家として体をなしていない。米軍による主権侵害を放置している。危険な訓練に歯止めもかけられないのは主権国家と言えない。日本政府として米側に当然抗議すべき問題だ。領土・領空・領海内では米軍にも日本の国内法(航空法)が適用されて当然であり、国内法を守らせるのは政府、国会議員の責任だ。
日本政府が米軍の訓練内容を把握し、危険を伴う場合には中止させる。国民の生命財産を守るため必要不可欠な対応だが、現状は野放し状態だ。ドイツやイタリアでは米軍に国内法を適用し、米軍もそれを尊重している。しかし日本政府には国民や県民を守るという基本姿勢が全く見えない。
数日での訓練再開は県民の反発を招く。米軍司令官の質が低下し、同盟国に対する敬意が払われていない。横柄で傲慢(ごうまん)な姿勢は反軍感情を高め、反米意識につながりかねない。米軍にとっても良くないことだ。
落下原因の原因究明を 明田川・法政大教授
落下の原因究明もきちんとされていない。それがなされないうちに、米軍の言い分では「違うもの」だとしても同様のつり下げを行うというのは一般の常識では到底考えられないことだ。陸地にでも落ちたら大変な事故になる。
なぜ今回の落下が起きたのか、米側は「周辺を確認した」と言うが本当なのか。落下の原因を究明するためには米側が出す情報だけに頼るのではなく、県や関係市町村が基地内に立ち入り、整備体制がどうなのか、つり下げ方がきちんとされているのかなどをチェックする必要がある。事故など何かあったときも含めてチェック体制が必要だ。
基地内への立ち入りは、基地の排他的管理権を定めた日米地位協定3条も絡んでくる。今回の落下は、航空法の適用の問題だけではなく、地位協定の条文や運用面の問題点を改めて浮き彫りにした。