高校受験は厳戒態勢で始まり、休校中の対応でも足並みの乱れが出るなど子どもたちの生活を直撃している新型コロナウイルス。沖縄県内で新たな感染者は10日以上出ていないが、裁判が延期になるなど影響は多方面に及んでいる。一方、子どもたちにおなかだけでも満たしてもらおうと、食事の提供を始める動きも出てきた。瞬く間に広がったデマを駆逐するか。善意の輪の広がりにも期待がかかる。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県内にある21カ所の特別支援学校や分教室、ろう学校、盲学校などでも4日までに休校措置が始まった。すべての学校が15日まで休校となるため、保護者の間では困惑の声も広がっている。県教育委員会によると、少なくとも5校で保護者から休校期間中の受け入れを求める連絡があった。
八重瀬町の県立島尻特別支援学校(比嘉朝子校長)は4日、幼稚部の奥間サリーさん(6)を受け入れた。弁当持参と送迎を保護者にお願いし、臨時休校中に奥間さんを含め幼稚部から高等部まで計5人を受け入れる予定だ。
比嘉校長は「どうしても厳しい家庭もあるので、保護者の相談を受けながら柔軟に対応したい」と話す。
サリーさんは4日、教諭らとブランコや三輪車、ボール遊びをするなどして過ごした。迎えに来た母親の真澄さん(43)=南風原町=によると、利用しているデイサービスが閉所日で、預け先がなくて困っていたという。5人の子どもがいて、小学3年生と2年生の子どもたちも自宅で過ごしている。「臨時休校が急に決まり、びっくりしてどうしたらいいのか不安だった。共働きで今日は仕事の都合もつかなかったので、学校で預かってもらい、すごく助かった」とほっとした様子で語った。
特別支援学校を一律に休校措置としたことについて、県教委の担当者は取材に対し「総合的な判断だ。医療的なケアが必要な子もいるので、保護者からこのまま通わせていたら感染のリスクがあるのではないかという声もあった。濃厚接触のリスクは高いと思う」などと説明した。
家庭状況に即した対応を 島村聡・沖縄大准教授
特別支援学校で受け入れる子は一律ではなく、知的障がい、肢体不自由、難病など学校によって事情が違う。肢体不自由の児童生徒を受け入れている学校などは、ゆったりとした空間の所が多い。むしろ地域の方が密集度が高く、密集を理由に「学校に来させない」というのは成り立たないのではないか。一方、知的障がいを抱えた児童生徒が多く通う学校は密集度が高く、警戒していると思う。
児童デイは通常、放課後に児童生徒を受け入れている。この体制を変更し、休校の間、朝から児童生徒を受け入れることができているのかを注意深く見る必要がある。保護者の就労状況を考えると、一律に休校として良かったのかを考えないといけない。障がいを抱えた児童は、健常者と比べると預かりが大変だ。さらに、学童保育も利用できない。特別支援学校に通う児童生徒の数は少ないので、保護者の状況を丁寧に聞き取り、状況に即した対応が必要だったのではないか。児童デイを利用する場合の費用負担もかかる。その穴埋めもしっかりと対応していくべきだ。
(沖縄大福祉文化学科准教授)