女子サッカー国内屈指のホットスポットは沖縄 その意外な理由とは


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 日本サッカー協会(JFA)は女性が輝く社会の実現の契機にしようと今年から3月8日の「国際女性デー」を「JFA女子サッカーデー」とすることを決めた。2021年には国内初のプロリーグが開幕するなど、女子サッカーへの注目度がより高まっている。あまり知られていないが、県内は中高生の競技者数が国内トップクラス。育成年代の代表に選出される選手も少なくない。国内屈指のホットスポットだ。

KBC杯県選手権決勝で対戦する県内常勝チームのヴィクサーレ沖縄FCナビィータ(青)と、新勢力のカーサ・オキナワ・アレ(赤)の選手ら=2019年12月14日、西原町の西原マリンパーク

■チームレベル向上

 県内の中学、高校、クラブを合わせた競技者数は951人で九州で最も多い。九州2位の福岡は372人で、飛び抜けている。全国では東京(2115人)、埼玉(1460人)、大阪(979人)に次ぐ。

 広く普及している点について、県サッカー協会女子サッカー技術部長の高嶺朝也氏は「他県と比べて私立のサッカー部が少ない」と意外な分析する。公立校では5年ほどで指導者が異動になる。異動先で部を発足させ、普及につながったという。中体連加盟の8チームは全国で一番の数だ。

 日本代表が優勝した11年のワールドカップ(W杯)前後は、JFAから女子の普及・選手育成のための補助金が多く支給され、誰でも気軽に参加できるサッカーフェスティバルを年に2~3回実施してきた背景もある。

 12~16年に県が実施した芝生管理の専門家を育てる芝人(しばんちゅ)養成事業で練習環境が向上したことも人気を加速させた。高嶺さんは「個人力も間違いなく上がっている」と語る。ナショナルトレセンに選ばれる選手は年々増加傾向にある。

■中体連加盟全国一

 なでしこリーグ参戦を目指し、九州リーグで奮闘するヴィクサーレ沖縄FCナビィータ、全保連琉球デイゴスが県内のトップにいる。なでしこ経験選手が県外から加入したこともありレベルは一気に向上した。チームは中高生年代の受け皿にもなっている。

 ナビィータの與座周平監督が「選手が上を目指せる環境をつくりたい」と理念を掲げるユースは各年代で圧倒的な強さを誇っている。昨年は九州U―18選手権で頂点に立った。

 新勢力も台頭する。昨年4月、全国制覇を目指す15歳以下のチーム「CASA OKINAWA ALE(カーサ・オキナワ・アレ)」が誕生した。元ビーチサッカー男子日本代表の塩川健勇氏が指揮を執る。塩川氏は18年に全国少年少女草サッカー大会で那覇プリテンを県勢初の日本一に導いた。「県外で試合することが難しい分、男子の中でもまれなければならない」と分析し、普段から男子チームと練習を共にする。

 遠征費を捻出して県外大会に参加したり、強豪の視察をしたりと「経験値も積み上げてきた」。わずか1年足らずで成果を示した。高校・一般も参加するKBC学園杯争奪県選手権(昨年12月)では、ナビィータに敗れたものの準優勝を果たした。だが塩川氏は「日本一を目指すにはまだまだ」と納得していない。

 與座氏は「今は(チームの)選択肢が増えてきているから、うちとしては大打撃ですね」とうれしい悲鳴を上げた。塩川氏は「来年か2年後か、やると思いますよ」と全国優勝に向けて頼もしい表情を見せる。県出身のプレーヤーが世界で活躍する姿を見られる日は遠くない。

(喜屋武研伍)

3月8日は国連が定める「国際女性デー」。女性への差別撤廃と地位向上を考える日です。琉球新報は8日に向け、誰もが自分らしく生きられる社会を目指し、紙面、Webで関連記事を掲載します。ハッシュタグなどで、県外メディアの女性デー企画とも連携します。