日常生活で被害を受け、つらい思いをしている人が多数いることが示された。
3月8日の国際女性デーに合わせて本紙がインターネットで行ったアンケートで、女性の回答者400人の80%が「性的嫌がらせを含むセクハラ」を受けたと答えた。一方で、被害を相談した人は44%にとどまり、56%は相談せず泣き寝入りしたという。
ネット上のアンケートに自ら回答する形式のため、被害を訴える声の方が多くなる傾向はあるだろう。しかし、初めて痴漢を含む性的嫌がらせを受けた年齢を「小学生以下」と答えた人が44%に上り、62%は日常生活で性的嫌がらせを感じることが「ある」とした。重大な社会問題だ。
私たちは表に出にくい性的嫌がらせの被害をきちんと見つめ、なくすためにどうすれば良いかを社会全体で考えなければならない。
国際女性デーに合わせて8日、フラワーデモが那覇市など県内4カ所で開かれた。性暴力撲滅を訴え、花を持って被害者に寄り添おうというデモだ。県内では那覇市で8月に始まり、今回が最後になる。
きっかけは昨年3月、娘に対する実父の性的虐待や酔って抵抗できなかった女性への性的暴行など4件に、相次ぎ無罪判決が出たことだった。女性たちが判決に抗議して4月に始め、全国に広がった。那覇市のデモで主催者も驚いたのは、長く苦しい思いを抱えてきた女性が実際に被害を語り始めたことだ。
性被害やセクハラを「大したことない」と放置し、時に被害者の方に落ち度があると責める。男性中心社会の風潮が多くの被害者に沈黙を強いてきた。
2017年にハリウッドの大物プロデューサーらの性暴力が明るみに出て、性暴力告発の「#MeToo」運動は世界に広まった。日本でもジャーナリストの伊藤詩織氏が実名でレイプ被害を訴え、財務事務次官のセクハラが公になり、沈黙を破る兆しが生まれている。
しかし、「セクハラ罪という罪はない」と開き直る麻生太郎財務相に象徴される、性被害に鈍感で頑迷な政治では日本社会は変わらない。
刑法の性犯罪規定は17年に改正され、法定刑は引き上げられたが、性暴力が犯罪として成立するには暴力や脅迫があり被害者の抵抗が著しく困難な状態などとする要件は残った。刑事事件に至るような深刻なレイプ被害でなくとも、性的なからかいなどの嫌がらせはさらに多い。
本紙アンケートでも、幼少期に被害に遭うケースが多く、多くが被害を我慢してやり過ごし、半数以上が誰にも相談していない。
子どもの時からの人権教育と、性犯罪に対する厳しい法改正が必要なことは言うまでもない。社会が一人一人の人権を尊重し、性的嫌がらせにノーを言う。国際女性デーをそのきっかけにしたい。