国際通りから人が消える… 閑古鳥鳴く飲食業や土産物店 新型コロナが観光業を直撃 影響は「同時テロ、大震災上回る」 <急転・沖縄経済 新型コロナショック>①


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新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で人通りが少なく、閑散とした様子の国際通り=9日、那覇市松尾(大城直也撮影)

 国際通りから人が消えた―。大勢のクルーズ船客を乗せた観光バスやレンタカーの車列、歩くのが大変なほどの人混みは姿を消し、通りは閑散としている。新型コロナウイルス感染症の拡大により、沖縄の基幹産業である観光は完全停止に近い状態に陥っている。政府の要請する大型イベント自粛や臨時休校で経済活動全体が停滞する中で、中小企業の資金繰りや雇用の悪化といった懸念も広がる。拡大を続けてきた沖縄経済を襲う危機の影響を追う。

 「しばらくの間、臨時休業とさせていただきます」

 平和通りのアーケードをくぐると、シャッターの下りたドラッグストアに休業のお知らせが貼り出されていた。臨時休業に入ったのは8日からで、担当者は「コロナの影響で客が少なくなった」と語る。

 沖縄を訪れる外国人客の増加を背景に、国際通りには続々とドラッグストアが開店してきた。だが、新型コロナの感染拡大で外国人客はほとんど姿を消し、卒業旅行の大学生や地元客がまばらに歩く程度だ。

 売り上げの9割が外国客だというサツドラ沖縄国際通り店の店員は「売り上げが前年の7割減だ。販売する商品も外国客向けのため、地元客の出入りも少ない」と肩を落とす。ココカラファイン国際通り店も中国の春節が明けた2月から徐々に客足が減り、店長は「従業員には有給休暇を取得してもらい、シフトを調整している」と話す。

 国際通りに面した飲食店や土産品店は、客を呼び込もうと店前で声を張る。沖縄料理店の「琉球ダイニング あれんじ」は、客の6~7割が観光客だ。社員の久田友平さんは「2月に入って目に見えるように客が減り、いつもの半分ほどの客数だ」と話す。

 「インスタ映え」するカフェとして修学旅行生や地元の学生をターゲットにしていた「ステム・リゾート ハッピービーチ」は、修学旅行の中止や臨時休校の影響で客が一気に減った。多い日で1日400人ほどが来店したが、今では3分の1ほどだ。経営するFNDの林教之取締役は「客のほとんどが修学旅行生だったが、今週はゼロだ。地元の人も出歩かない。早く終息してほしい」とこぼした。

 観光客でごった返していた牧志第一公設市場の仮設市場も閑古鳥が鳴く。2階食堂街で沖縄料理を提供する「道頓堀」の上原佐和美店長は「創業65年たつが、これほどの状況は初めてだ」と驚きを隠せない。ただ、逆境の中でも店を開け続ける決意だ。「店を閉じたら他の店にも影響が出るかもしれない。市場を活気付けるために忍耐の時だ」

 沖縄観光コンベンションビューローは3~5月の観光客が150万人減少し、観光消費額の損失は1千億円になると試算した。負の影響が連鎖的に観光以外の各方面に広がることが警戒される。りゅうぎん総合研究所の久高豊専務は「米中枢同時テロや東日本大震災を上回るインパクトを与える可能性がある」と指摘する。
 (石井恵理菜)