閑散とするレンタカー受付所… 観光業、売り上げ激減で雇用に影<急転・沖縄経済 新型コロナショック>②


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客の減少やスタッフの出勤削減で閑散としたレンタカー受付所=5日、豊見城市のOTSレンタカー臨空豊崎営業所

 新型コロナウイルス感染症の拡大で観光の客足が途絶え、業務が大幅に減っている旅行業やホテル、バスなどの観光各社は、従業員を休ませざるを得ない状況となっている。売り上げの激減に耐えながら、終息の日までいかに社員の雇用を守れるかを模索している。

 県内旅行業大手の沖縄ツーリストのレンタカー部門、OTSレンタカーの臨空豊崎営業所(豊見城市)は、通常なら利用客が列をつくる九つの接客カウンターに人影はまばらだ。スタッフも各カウンターに1~2人を配置していたのが、カウンター全体を1人で見ている時間帯もある。

 車両の貸し出し台数が少ないこともあり、レンタカー洗車機は稼働せず、スタッフが1台ずつ手作業でアルコール除菌と洗車をこなしていた。社員は「今は安心して乗ってもらえるように努力するしかない」と語る。

 同社のレンタカー利用客の7割を外国客が占める。昨年来の日韓関係悪化に伴う韓国人客の減少に加え、新型コロナウイルスの国内感染拡大で台湾客などからのキャンセルも相次ぎ、打撃を受けている。

 業務が減る中で沖縄ツーリストは3月はじめから、全従業員の約4割に当たる250人を交代で休ませる対応に入った。休業中の給与は厚生労働省の雇用調整助成金を使って補償し、売り上げが見込めない期間を持ちこたえる措置だ。

 安部潤マーケティング戦略本部長は「状況を乗り切るため制度を積極的に活用する。率先して使うことで他の企業への(制度の)周知にもなる」と話す。

 沖縄観光最大の集客施設となる本部町の沖縄美ら海水族館は、2日から15日まで前例のない長期休館を余儀なくされている。指定管理者の美ら島財団は、窓口業務などを担う契約社員を中心に百人超を休業させており、雇用調整助成金の適用についても要件を確認して検討している。

 例年なら2~3月は卒業旅行などでにぎわう時期だったが、16日以降の再開も不透明だ。県外から「いつ開くのか」と問い合わせが相次ぐが、担当者は「安全第一なので終息を待つしかない」とため息をつく。

 観光バス事業の游楽沖縄(豊見城市)は、客層を国内客と海外客で半分ずつにしてリスク管理をしていたが、今回は海外も国内も影響を受けた。3、4月の売り上げは前年よりも8割減少する見込みだ。

 社員9人の生活を守るため出勤体制は通常通りにして基本給は維持している。だが、仕事は減ったため、車の点検や掃除をして時間を過ごしている。会社の資金繰りも徐々にきつくなり、経営維持のため金融機関に融資を申し込んだ。代表者は「終息すれば(需要は)復活するだろう。人員カットは考えていない」と早期の回復を願った。

 沖縄観光総研の宮島潤一代表は「感染拡大が終息し、再び観光が回復した時に人材を確保しようとしても難しくなる。将来に必要な観光人材を逃してしまわないよう、雇用を守る必要がある」と語り、中小・零細が多い県内観光事業者を行政が支援する必要性を指摘している。
(中村優希)