厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の本格的な流行に備えるため、その規模を仮定として示すシナリオを示した。中国政府や研究者が発表している疫学情報などを活用し、数理モデルの手法を用いて今後の流行を推計したものだ。ただし、これは将来を正確に予測するというよりは、今後地域で流行した場合を仮定して、行政や医療などの関係者がイメージを共有できるようにすることを目的としている。
まず発症者数については、毎年のインフルエンザと同等としている。よって、重症化リスクの低い若者たちが落ち着いて行動し、各医療機関が必要な感染対策を取りながらインフルエンザと同様に外来診療を行っていけば、この流行は乗り越えられるものと考えられる。
ただ病院の救急外来は後述するように重症者の対応に追われる可能性が高く、いかに軽症者を一般診療所へと誘導していけるかが、ピークを乗り越える鍵となりそうだ。不安になった軽症者が救急外来に詰めかけると、医療の機能不全が起きてしまうことも考えられる。
一方、入院患者数と重症患者数については、既に過密となっている本県の実情を考えると、厳しいシナリオが示されている。治療が終了して状態が安定している入院患者について早期退院に協力いただくなど、入院できない患者が発生しないように住民と地域医療が力を合わせる必要がありそうだ。
そして、地域での流行が始まるとしても、シナリオに示されたような流行規模とならないよう症状のある人が外出自粛を守り、感染拡大のリスクとなるイベントを自粛することが求められる。特に重症化しやすい高齢者や基礎疾患を有する人へと感染させないことが重要だ。
(高山義浩、県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長)