「うわさ広がっていた」 血統牛DNA不一致で和牛農家 取引価格への影響を懸念


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久米島町内で出荷を待つ牛。DNA不一致問題を受け、取引価格の低下に農家の不安が広がっている=11日、久米島町

 久米島家畜市場で出荷した一部の牛で血統書とDNAが一致しない問題が明らかになり、県内で和牛を取り扱う農家からは驚きの声が上がった。人工授精師が規定に反する種付け方法を行っており、農家は沖縄の畜産業全体の信頼が揺らぎ、競り価格が下落することを強く懸念した。

 沖縄市が拠点の和牛繁殖農家の辺土名朝也さん(40)は「正月明けから、畜産業界では安福久の血統問題に関するうわさは広がっていた」と明かす。人工授精師にとって種付け方法の規定順守は基本といい、「同業として残念だ」と述べた。

 本部町で子牛約100頭を育てている石川清嗣さん(30)は、事態を公表しなかったJAおきなわについて「すぐに言わない方が混乱を招く」と対応を疑問視した。本島南部の和牛農家(61)は、新型コロナウイルスの影響による消費低迷などで競り価格が下がっている中で、「安福久のDNA不一致の問題でさらに単価が下がるのではないか」と今後の影響を不安視した。

 安福久の血統牛も取り扱っている、うるま市の和牛繁殖農家の50代男性は「取引価格に影響が出ないか心配だ」と危惧する。

 人工授精師や各農家が血統証明や和牛登録規定に関する知識を深める必要性を指摘し、「問題の発生要因を明らかにしてほしい」と願う。

 JA石垣牛肥育部会の比嘉豊部会長は「これが沖縄全体の話として捉えられると痛い」と語り、県などに対して「今後このようなことがないように指導を徹底してもらいたい」と求めた。