「マスコミには漏らすな」 組合長、農家説明会でかん口令 血統牛DNA不一致の対応に疑問の声


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久米島町内で出荷を待つ牛。DNA不一致問題を受け、取引価格の低下に農家の不安が広がっている=11日、久米島町

 「安福久」の血統牛として久米島家畜市場から出荷された子牛の一部に血統矛盾が含まれていた問題で、JAおきなわ久米島支店と久米島和牛改良組合が昨年の段階でDNAの不一致を把握しながら、バイヤー(購買者)や生産者らに情報を公表してこなかった対応に疑問の声が上がっている。2月末の地元農家向けの説明会では同組合の翁長学組合長が「マスコミには漏らすな」と“かん口令”を敷き、今月18日の競りを通常通り開催する方針を示したという。参加した農家から「隠ぺいだ」との批判が上がった。

 同支店や農家によると、2月29日、久米島家畜市場でDNA不一致問題に関する農家向け説明会が初めて開かれた。この問題に関して、農家の間では既にうわさ話が広がっていた。

 60人余りの参加者を前に、同支店の松元靖農産課長と翁長組合長が経緯や対応方針を説明した。参加者によると、その中で「マスコミが一番怖い。マスコミに漏らすな」との発言が飛び出したという。松元課長も「DNA検査の結果が出ていないので騒がないでほしい」と要請し、参加者の一部は「隠そうとしているのではないか」と疑問の声を上げた。

 さらに、検査結果の出ていない安福久の血統牛について、3月18日の競りに出品する方針が示された。これに対しても参加者の一部が「変じゃないか」と意見を出したが、出品の方針が確認された。50代の男性農家は「(血統証明が正しいかどうか分からない)グレーの牛を市場に出すのは購買者に失礼だ。クロ(血統矛盾)が出たら久米島の信用が無くなってしまう」と憤った。

 琉球新報の取材に松元課長は「変なうわさが広がると、購買者の不安をあおってしまうと思った。隠す意図は全くなかった」と釈明した。久米島町議でもある翁長組合長は取材に「必死だったので何を言ったか覚えていない」と答えた。

 琉球新報の12日付報道を受け、競りを運営するJAおきなわは同日夜に、普天間朝重理事長名でコメントを発表した。

 それによると、血統矛盾の牛を種付けした家畜人工授精師(48)の関わった子牛について、DNAの検査結果が明らかになるまで競りへの参加を禁止する措置を取るとして、方針を一転させた。

 町内の50代の農家は「信頼を回復するためにも情報を公開し、うみを出し切ってほしい」と話した。
 (真崎裕史、石井恵理菜)