こんなに急に人がいなくなるとは… 「宮古バブル」と言われた島を襲う不安の連鎖とは <急転・沖縄経済 新型コロナショック>④


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クルーズ船が寄港するふ頭。船が寄港した際は、乗客を待つバスやタクシーが数十台並ぶ=12日、宮古島市平良の下崎ふ頭

 ホテル従業員や建設作業員の住まいが足りず、家賃の高騰など「宮古島バブル」と言われるほどの狂乱物価も見せていた宮古島市。2015年の伊良部大橋開通以降、破竹の勢いで観光客数を伸ばし、現在も多くのホテル建設が進むなど観光業が島の基軸にある。新型コロナウイルスの影響によるクルーズ船の寄港や航空便のキャンセルに伴って、にぎやかに街中を移動し、スーパーで買い物する外国人観光客の姿はぱったりと消えた。

 バスやタクシーの島内交通機関、飲食業などは大きなダメージを受けている渦中にあり、市の観光関係担当や関係機関、各業界からは不安と危機感に駆られた声が上がる。

 18年度、宮古島市の入域観光客数は114万3031人(前年度比15・6%)を記録し、年度単位で初めて100万人を突破した。19年度も今年1月までの入域観光客数は96万9895人を記録しているが、宮古島に寄港を予定していたクルーズ船の寄港キャンセルが1月に1回、2月は15回、3月には19回と計35回に上っている。

 市観光商工課は「3月のクルーズ船寄港がゼロだとしても、年度で何とか100万人には届くのでは」と語るが、終息の見通しが立たない現状に「とにかく予防に努めるしかできることがない」と肩を落とす。

 市の一大スポーツイベントである4月の「全日本トライアスロン宮古島大会」の中止が決まったのも痛手だ。中止判断に至るまでの準備で約2千万円を支出していた中で苦渋の決断だった。市によると同イベントの経済効果は試算で3億6千万円。「致し方ないとはいえ、年度初めの華やかなイベントがなくなるのは、観光PRをしていく上でのイメージを考慮するとかなり厳しい」(市職員)。

 クルーズ船客を乗せて島内を案内するバスやタクシーの売り上げも直撃する。タクシー運転手の60代男性によると、クルーズ船客を乗せる場合は4~5時間程度の時間貸しが多く、一般客などを加えると1日約3万円前後の売り上げがあった。運転手は「今はその半分にも届かない日も多い。こんなに急に人がいなくなるとは考えていなかった。どうしようかね」と途方に暮れたように話した。

 市内の地元バス会社はクルーズ船だけでなく、国内の団体ツアー客のキャンセルも相次いでいる。職員の男性は「2~3月は団体客の繁忙期だがほぼ全滅。4月の日程にまで波及し始めている」と困惑気味に語る。「うちは国内ツアーを主軸にしているのでクルーズ船だけならばまだしのげるが、団体が皆無だとどう対処していいのか」と頭を抱えた。
 (真栄城潤一)