同一授精師でDNAが不一致 調査で11頭判明 和牛血統矛盾 授精師「故意ではない」


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 「安福久」を父牛に持つという血統証明書とDNAが一致しない牛が最初に見つかったのは昨年6月で、沖縄市の農家がDNA検査の結果を県家畜改良協会に報告したことで判明した。9月に福島県の購入農家、10月には鹿児島県の購入農家からもDNA不一致の報告があった。

 この3件は人工交配を手掛けた家畜人工授精師が異なっており、家畜市場を運営するJAおきなわは「人的ミス」と判断し、購入農家に個別に補償することで解決したという。

 12月に伊江村の購入農家から4件目の報告があり、この牛は1件目と同じ授精師が種付けしていた。同一人物で不一致が続いたことを疑問視し、JAおきなわと県家畜改良協会、久米島和牛改良組合が協議し、同授精師が種付けした牛を調査することを決めた。

 JAなどの調査で新たに6件の不一致が判明。県が家畜改良に関する事業で検査した3頭でも不一致が出ており、13日までに同授精師の関係で合計11頭の不一致が判明している。

 同授精師は琉球新報の取材に、種付けの際に1回目と2回目で異なる精液を使ったことによるミスが不一致の原因だとして、故意による不正ではないと説明している。だが、和牛登録規定は発情期間に異なる精液を使うことを禁じており、専門家は「基本中の基本であり、知らないとは考えにくい」と指摘する。

 同授精師はこれまでに3251頭の種付けを久米島で手掛けており、島で行う交配の半数は同授精師によるものだという。安福久の精液は2012年ごろから扱っていた。