【記者解説】私人なりすましに〝お墨付き〟 辺野古裁判、沖縄県の敗訴確定へ


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 名護市辺野古の埋め立てを巡る「関与取り消し訴訟」で最高裁が県の訴えを退け、敗訴が確定する見通しとなった。一般私人の権利救済のための行政不服審査制度を、国の機関である沖縄防衛局が私人になりすまして利用したことに「法の番人」がお墨付きを与えることになる。

 県が沖縄防衛局に与えた公有水面埋め立ての「承認」は、私人に与えられる「免許」とは性質が異なる。免許を受けた私人には埋め立てた後に知事の認可を受けなければ所有権が発生しない。一方、承認を受けた国は知事に埋め立てたことを通知すれば所有権を得ることができる。

 このことからも沖縄防衛局は一般私人では立ち得ない「固有の資格」を有しており、本来は行政不服審査法を利用することはできないはずだ。しかし司法はこのことを過小に評価し、県の主張を退けてきた。

 2000年に施行された改正地方自治法は、国と地方公共団体の関係をこれまでの従属的な関係から対等な関係と位置付けた。関与取り消し訴訟は、国からの不当な関与に対抗するために地方自治体に認められた手段の一つだ。

 県と国の訴訟は「沖縄の基地問題」という枠組みにとどまらず、地方自治体と国の関係性を改めて問うている。今回の最高裁の判断はこの関係を位置付けてきた理念を揺るがす可能性がある。
 (梅田正覚)