日韓関係悪化から始まり海外路線が激減 週232便から49便に 需要回復見通せず頭抱える航空会社 〈急転・沖縄経済 新型コロナショック〉⑤


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ほとんど人が通らず、閑散とする那覇空港国際線ターミナルの保安検査場入り口=9日、那覇空港

 新型コロナウイルスの影響は、沖縄に営業拠点を置く海外の航空路線にも影を落とす。中国と韓国からの入国制限が強化され、沖縄からの直行便は運休が相次ぐ。十分な収益を上げられない中で沖縄の営業拠点を維持する必要があり、航空関係者は「今の状況が長引けば事務所の維持も厳しくなる」と頭を抱える。

 韓国の航空会社の沖縄支店長は「今はどんな仕事をやってるのかとよく聞かれる」と苦笑いする。同社はソウル―那覇路線を運航するが、現在はすべて運休している。日韓関係悪化の影響で減便していた路線を3月末から復活予定で、年明けから韓国路線の搭乗率が高まりつつあった。需要回復の兆しが見えていた中で、新型コロナ感染のあおりを受けた。

 運休により業務は激減し、16日から一部の社員を自宅待機させている。空港事務所の賃料や人件費などが経営の負担となっているといい、コンセントをこまめに抜いたり、紙の印刷はカラーからモノクロに変えたりするなどして経費節減を図っている。

 6月からは沖縄と韓国を結ぶ路線を再開する予定だが、当面は韓国客の需要回復は見通せないため、在日米軍関係者らの需要を取り込む計画だ。アメリカまで乗り継ぎがしやすい午前中に運航時間を変更するという。

 アジア地域の成長に伴う旅行需要の高まりなどで、沖縄を訪れる外国人観光客は右肩上がりに伸びてきた。沖縄と海外を結ぶ航空路線も増加し、19年3月末時点で週232便が運航していた。しかし日韓関係の悪化から韓国路線の減便が始まり、新型コロナの影響で中国・韓国路線が規制され、今月9日時点で週49便まで激減した。

 現在も沖縄路線を維持する台湾の航空会社でも、搭乗率の落ち込みが顕著に表れる。3月の搭乗率は前年と比べて半分になる見込みだ。収益が落ち込む中で、人権費や事業の外部委託費、着陸料などが営業所運営の負担となっている。飛行機を大型から小型機に変更し、需要に応じて運航便数を調整することで、路線を維持している。担当者は「お客さんがいるうちは、なんとか飛行機を飛ばしたい。今が踏ん張りどころだ」と気持ちを込める。

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の担当者は「今は回復に向けた準備を進める必要がある」と述べ、厳しい環境を乗り越える決意を固める。OCVBでは観光関係者を集めた沖縄観光リカバリープロジェクト委員会を開いて対策を考えるなど、観光産業の回復に向け模索を続けている。
 (中村優希)