国際通り周辺店舗の相次ぐ閉鎖で地価下落の兆候も… 先行きの不透明感増す 〈急転・沖縄経済 新型コロナショック〉⑥


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周辺地域で坪単価1千万円を超える高値の土地取引が見られる国道58号=18日、那覇市

 観光客の増加に伴うホテルや商業施設の建設に加え、低金利の環境下で住宅投資が活発化したこともあり、県内の不動産価格は右肩上がりで伸び続けてきた。国道58号沿いの土地が坪単価1千万円以上で取引される事例もあり、県内の経済関係者は「異常なほどの値上がりだ」と驚きを隠さない。だが、今年に入って新型コロナウイルスの感染拡大で観光客は激減。県経済に暗い影を落としている。複数の不動産関係者は「土地取引に影響を及ぼすかもしれない。以前のような高値の取引はなくなるだろう」と予想する。

 県不動産鑑定士協会がまとめた不動産業者の市況感を示す業況判断指数(DI)は、昨年11月時点で県内地価の上昇を実感する見方が強かった。一方で今後の土地価格の下落を懸念する意見も多く、県内地価がピークを過ぎたとの分析もあった。金融機関が不動産融資に慎重となったことや、一部地域で賃貸物件が供給過剰になっていることなどが背景にあるとみられている。

 同協会業務委員長の伴清敬氏は「以前は情報が表に出る前に不動産の売買が完了している事例が多かった。最近は売買情報がネットなどにも出ている」と取引環境の変化を実感する。新型コロナの感染拡大の影響も広がっており、先行きの不透明感が増している。伴氏は「新型コロナの影響は現時点で判断が難しく、みんな様子見をしている状態だろう」と分析した。

 県内の不動産関係者によると、観光客の激減で国際通り周辺の店舗の閉店が相次いでおり、土地価格の下落につながる兆候も見せ始めている。同関係者は「空き物件があると収益が出ていない場所だと評価される。土地価格にも影響するはずだ」と分析する。ホテル稼働率も低水準となっており、建設計画の見直しなどが出ることも考えられるという。「ホテル建設のために取得した土地が安価で売られることもあり得る。地価への影響が徐々に出るかもしれない」。不動産関係者は険しい表情を浮かべる。

 新型コロナの影響で経済環境が変化し、投機目的の土地売買が沈静化するとの見方もある。県内で土地取引を手掛ける会社の幹部は「今まではお祭り騒ぎのようだった」と指摘。那覇市内では地価上昇に便乗して、実際の評価額以上の高値で売買を持ち掛ける事例もあったが、新型コロナの終息時期が見通せない状況の中、これまでのような活発な取引は鳴りを潜めるとの見方もある。同幹部は「今までの異常な動きが落ち着くかもしれない」と先行きを見通した。

 (平安太一)