「外国人観光客の売り上げは壊滅的だ」。新型コロナウイルスの感染拡大でクルーズ船の寄港キャンセルが相次ぎ、中国と韓国からの入国規制強化で航空路線は運休・減便が続く。多くの外国人観光客でにぎわっていた県内の商業施設は集客に苦しみ、小売り関係者らは頭を抱える。新型コロナは終息の見通しが立たず、外国人客の回復も当面は見込めない状況だ。一方で県内客が戻り始めるなど、明るい兆しも見えている。
イオンモール沖縄ライカム(北中城村)の佐藤規正ゼネラルマネージャー(GM)は「今後は(中国や台湾など)海外の来店者がゼロに近くなる」と険しい表情を見せる。日韓関係悪化の影響で韓国人客が減少し、昨年の秋ごろに「底を打った状態」(佐藤GM)となった。年末から外国人の集客が徐々に回復し、さらなる増加を期待していた時期に新型コロナの感染拡大が襲った。
佐藤GMは「現在は昨年の秋ごろより厳しさが増している」と明かす。県内で新たな感染者が出た場合は、さらなる状況悪化も懸念される。一方、店内では多くの県内客が買い物を楽しむ姿も見られる。佐藤GMは「卒業式を終えた中高校生などが来てくれている。今は足を運んでくれる利用者に満足してもらうことが重要だ」と話した。
県内スーパー最大手のサンエーでも、那覇メインプレイスを中心に外国人客の免税売り上げが減少した。1月はマスクなどの需要が売り上げを下支えしたが、中国の団体客が落ち込んだ2月は前年比でマイナスになる見込みだ。県内でも外出を控える動きが広がり、地元客の店舗滞在時間は以前より短くなっている。
それでも県内で学校の臨時休校が解除されて以降は家族連れなども見られるようになり、担当者は「集客が上がる前向きな材料はある」と感じている。
リウボウホールディングスの糸数剛一会長は「新型コロナは大きな波のようだ」とインパクトの強さを実感する。デパートリウボウでは外国客の減少に加えて、県内客の落ち込みも顕著だった。糸数会長は「百貨店は非日常の空間で、必ず行く必要がある場所ではない。外出自粛が広がる状況では、影響がすぐに出る」と語る。
今後は中小・零細の商店や飲食店の倒産などが増えることも考えられ、糸数会長は「今は耐える時期だ」と見ている。一方で外国人観光客に頼りすぎない経営など、県内企業が新たな事業展開を考える機会になると考えている。糸数会長は「新型コロナが終息したとき、沖縄経済が以前よりも進化することが重要だ。苦しい時期に耐えながらも、攻める経営を進めてほしい」と強調した。
(平安太一)