セーフティーネット資金申し込み相次ぐ 前年同時期ゼロから247件に 中小企業に厳しい現実 〈急転・沖縄経済 新型コロナショック〉⑨


セーフティーネット資金申し込み相次ぐ 前年同時期ゼロから247件に 中小企業に厳しい現実 〈急転・沖縄経済 新型コロナショック〉⑨
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 新型コロナウイルス感染症の影響で、世界経済は日増しに混乱の度合いを増している。県内経済も拡大傾向から一転した落ち込みの激しさと、回復時期を見通せない不透明感にさらされている。2カ月前までは誰一人として予想していなかった暗転劇に、地域企業の資金繰りを支える金融機関の真価が問われている。

 6日、日本銀行那覇支店は直近の景況判断を2011年4月以来8年11カ月ぶりに引き下げた。全体の基調判断は「全体として拡大」を6年6カ月連続で維持しているが、経済の停滞が長引くことで、桑原康二支店長が「最後の砦(とりで)」と表現する県民の「雇用」と「所得」にまで負の影響が波及すれば、基調も変化しかねない恐れがある。

 県内経済はピーク期に比べればペースは鈍化していたものの、全体としては拡大を続けていた。金融関係者の中には、日韓関係悪化に伴う韓国人観光客の減少や消費増税などマイナスの材料から、20年の後半には拡大が弱まるという見方もあった。

 ある地銀関係者は「じわじわと景況感が後退していくことをイメージしていたが、さすがにここまで急激に需要がなくなる事態は想定していなかった」と現状を指摘する。

 長い好景気の間にキャッシュフローが改善された企業もある一方、設備投資や人件費上昇でランニングコストが増加している企業も多い。沖縄観光の将来性を見込んで県外、海外資本が参入してきたこともあり、ホテルなどでは競合が激化し個別企業の収益悪化が指摘されていた。そうした折に新型コロナ拡大の影響が襲
い、中小規模が多い県内企業の経営は当面は、予断を許さない局面が続きそうだという。

 資金繰りの悪化を防ぐために、行政も対応を加速させている。県は災害などで経営環境が悪化した中小企業を対象にしたセーフティーネット資金の対象災害に新型コロナを追加した。保証料がかからず金利も0・9%と低いため、保証を担う県信用保証協会には連日多くの申し込みが寄せられている。

 3月1日から12日までに、247件、51億4810万円の受け付けがあった。セーフティーネット資金の前年同時期の申し込みはゼロだったため、深刻な影響がみてとれる。サービス業をはじめ飲食業、小売業などからの申し込みが多い。同協会の仲栄真盛幸業務部長は「通常の担当7人に加え16日から8人の特別班を結成してスピード化を図っているが、それ以上に案件が多く土曜日も出勤して対応している」と話す。

 ある地銀関係者は「感染の終息まで耐えるしかない消耗戦では、どうしても資本の大きい全国企業や外資系が有利になり、県内企業が生き残れない可能性がある。苦境を乗り越えるため地元企業の支援を徹底したい」と話した。

(沖田有吾)