沖縄「厚遇」当たらず 高率補助制度 〝ひもつき〟で自由度低く 〈沖縄振興を問う~自立への姿~〉③


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 27年間の米国統治を経て日本に復帰した1972年当時、沖縄の社会資本は本土と比較し整備が大きく遅れていた。政府は道路や港湾、漁港などの整備を急速に本土並みの水準に引き上げる必要があった。そこで奄美群島の復帰時の措置や北海道総合開発計画に基づく措置などを参考に、沖縄振興開発計画に基づく事業に関する予算を一括して計上し、公共工事の国庫補助率をかさ上げする高率補助制度を特別措置法に組み入れた。

 72年から2018年までの沖縄関係予算12兆4832億のうち、79%にあたる約9兆9144億円が公共工事に投入された。高率補助制度を活用し、インフラ整備は急速に進んだ。復帰から40年余で道路実延長は4392キロから8084キロへと実に約2倍に伸びた。県職員は「裏負担が少なくなり、自治体がその分を教育や福祉の予算に回せる」とメリットを説明する。

多くない地方交付税

 国庫支出金の1人当たりの額を都道府県別にみると、2017年度は沖縄県が全国3位。福島や岩手県の震災地域を除くと全国1位だ。一方で、1人当たりの地方交付税は全国20位の水準のため、国から交付される依存財源全体でみれば全国11位にとどまる。

 地方交付税は、地方税収の少ない県ほど交付税額が大きくなる。沖縄県は人口1人当たりの税収額が全国で最下位にもかかわらず、地方交付税額にそれほど反映されていない。それは、県の財政需要が国庫支出金の高補助率によって補填(ほてん)される割合が他県に比べて高いためだ。

 つまり沖縄県は、高率補助によって財政需要が抑えられ、結果として本来得られるはずの地方交付税が少なくなってしまう“逆転現象”が起きている。「沖縄は優遇されている」と語られがちだが、実際は国庫支出金の高率補助と地方交付税がトレードオフ(一得一失)の関係となり、国からの財政移転が飛び抜けて高いという訳ではない。

財源の自由度

 さらに、国庫支出金は使途が定まった“ひもつき”の財源だ。国庫補助金の割合が高まることは使い道の自由度を低くする。このため、県内市町村から「国庫支出金よりも地方交付税の方を増やしてほしい」といった声が上がる。

 本紙が昨年末に実施した市町村アンケートでも、6割に当たる25市町村が、使い道が指定されない形での交付を望むと回答した。

 県庁職員OBで元副知事の上原良幸氏は「復帰以来、決まったメニューで公共事業をすることで行政が精いっぱいとなり、地域が自ら主体的に地域づくりに取り組むことが少なかった。主体的なまちづくりというレベルが全国に比べて低い」と分析し、自由度が低い財源への依存は公務員の政策形成能力にも関わってくると指摘する。

 上原氏は策定に関わった第4次沖縄振興計画(02~11年度)について「沖縄の特殊事情とは、不利性ではなく優位性なのだと打ち出した。日本に追いつくのではなく、沖縄のポテンシャル(潜在能力)を顕在化して日本の発展に寄与するものだった」と強調する。その上で「日本の中で先行する事業をつくり、具体的なプロジェクトを国と議論していかなければならない時期だ」と提起した。
 (中村万里子)

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 復帰後50年近くにわたる政府による沖縄振興は、戦後27年間米国に支配されたことや離島の点在、米軍基地の集中など沖縄の特殊な諸事情に鑑み、沖縄振興特別措置法に基づく沖縄振興計画を根拠に実施されてきた。次期振興計画の在り方を巡る国と県の協議は夏ごろから本格化する見通しだ。沖縄振興制度を巡るこれまでの経緯を振り返り、現状や課題を検証する。