預金者を囲い込むためATMの設置拡大を競ってきた同一地域のライバル地銀が、サービスの共同化へ歩み寄った。琉球銀行と沖縄銀行による現金自動預払機(ATM)の相互利用は銀行の経営モデルを巡る転換点となり、競争から協業を模索する金融業界の全国的な流れにも大きなインパクトを与えそうだ。
ATMの維持には、現金輸送の警備費用や電気代、借地料などで1台当たり年間約400万円かかるとされている。県内での維持費は全国平均よりも安いとされるが、それでも年数百万円単位が必要となる。
日銀の大規模金融緩和などにより低金利が続き、銀行経営は厳しい状況に置かれている。
既にメガバンクでは、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が2019年9月にATMの共同利用を開始している。重複するATMを将来的に統合していくなど、ATMの維持コストを軽減する効果を見込む。
琉銀、沖銀もATMの相互利用で経営の効率化が図られる。一方で、両行の顧客にとっては手数料無料で利用できるATMが増え、利便性が向上することにつながる。預金量で圧倒的なシェアを占める県内上位2行の提携だけに、規模のメリットは大きい。
キャッシュレス決済が普及しているとはいえ、日本では現金決済が依然として主流を占めている。社会インフラであるATMのサービス水準とコスト削減を両立できるかとともに、両行が共同化する業務をさらに広げるのか注目される。
(沖田有吾)