新たな写真が語る戦時中の南洋 県公文書館が31日から公開


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 県公文書館は31日から、戦時中のサイパン・テニアンなど南洋群島の住民らを写した写真320枚を新規資料として公開する。写真はいずれも戦時中に米軍が撮影したもので、2018年度の事業で米国国立公文書館から収集した。県公文書館は「県民の南洋群島での体験を伝える記録として大変貴重だ」としている。

米軍に保護された子ども。左側の子どもの首には包帯が巻かれ、「集団自決」(強制集団死)によってけがを負った可能性もある=1944年6月、サイパン(県公文書館所蔵)
サイパン島の軍政長官であるC・W・ニミッツ提督が発した布告を読む民間人=1944年7月、サイパン(県公文書館所蔵)

 戦時中のサイパン・テニアンなど南洋群島は日本の委任統治領で、多くの県民が移住していた。1944年6月から始まった戦闘で1万2千人余が犠牲になったとされる。

 新たに公開される写真は戦闘が始まった当初の44年6月から45年7月までに撮影されている。

 写真には首に包帯を巻いた子どもが写ったものもあった。同館の仲本和彦さんは「沖縄戦でも似たような写真があり、『集団自決(強制集団死)で生き残った子ども』との説明があった」と指摘。同様に「集団自決」で負傷した子どもの可能性があるとの見解を示した。

 そのほか、サイパンの写真には米海軍最高指揮官だったC・W・ニミッツ提督が出した布告を民間人が読む様子を収めたものもあった。同布告で行政権を停止し、米軍政下に置くことを宣言したとみられる。

 仲本さんは「米軍は沖縄戦の写真も多く残しているが、太平洋の島々で同じように残し、かなりの確率で県系人とみられる住民が写っている。これまで積極的に収集されていなかったが誰でも自由に複写できる状況になる」と述べ、多くの閲覧を呼び掛けた。

 写真は同館閲覧室のほか、同館ホームページ内にある「写真が語る沖縄」でも公開を予定している。