動画配信に電子チケット…沖縄エンタメ界の未来は? アーティストらが公開討論


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現状を共有し新たな方向性を見いだそうと討論する登壇者ら=23日、那覇市牧志のライブハウスOutput

 県内拠点のライブハウスの運営者やイベンター、アーティストらによる公開討論「2020年エンタメ業界の未来を語る会」が23日、那覇市牧志のライブハウスOutputで開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響を受けてイベントの自粛などを余儀なくされている関係者らが現状を伝え、エンタメの新たな方向性を見いだそうと生配信で収録した。

 登壇者は「ライブハウス島唄」代表取締役の知名定徳氏、桜坂劇場プロデューサーの野田隆司氏、FECオフィス代表の山城智二氏、「わが街の小劇場」管理人の福永武史氏、Output店長の上江洲修氏、同代表の濱里圭氏、ハードコアバンド「地獄車」の下條スープレックスホールド氏、3ピースバンド「オモイトランス」のりーこ氏。司会は幸田悟氏が務めた。

 1部では2月26日に政府からイベントの自粛要請が出された影響についてそれぞれの現状を報告。幸田氏がイベント運営者の中でも新型コロナウイルスによる認識の違いや捉え方が異なることを指摘した。上江洲氏は「ここまで中止、延期になるとは思っていなかった。換気や消毒液などの対策も行っているがイベントも決まらず、集客もならず大変だ」と自粛要請の影響を述べたのに対し、那覇市の「わが街の小劇場」管理人の福永氏は「(自粛要請は)全く気にしてなかったが、2月後半の落語の催しで出演者から自粛を考えていると言われ初めて意識するようになった」と話した。

 2部では沖縄のエンタテイメント界が未来をどのように構築していくかについて議論した。新たな感染者を生み出さない環境づくりについて、上江洲氏と野田氏は有料配信のトークライブで集客を得られたことを紹介した。一方、濱里氏は動画配信について「音楽ライブでは伝えきれないものがある」、福永氏は「演劇はお客さんとの融合において初めてなし得る」と疑問を呈した。山城氏は「お笑いでは映像の見せ方を工夫する必要がある。上手に取り組めれば、音楽や演劇にも可能性があるかもしれない」と指摘した。

 そのほか、会場でのマスクの配布や大型扇風機の設置などの提案も上がった。幸田氏はエンタメのネット上の無料サービスから収益を上げる「マネタイズ」の重要性について、電子チケット配信サービスなどを紹介した。りーこ氏や下條氏は「無料動画サービスでライブを配信したことによってライブの集客につながったケースもあった」と話した。

 エンタメの今後の方向性について野田氏は「地獄車やオモイトランス、BEGINなどの沖縄のアーティストがコラボレーションで新曲をリリースして、文化を支えるためのベネフィットができれば」と提案。知名氏は父の知名定男がかつてコザの民謡界や洋楽界らが業界を越えて交流していたことを「コザルネッサンス」と言っていたように、横のつながりを大切にしようと呼び掛けた。幸田氏は「戦後、小那覇舞天や照屋林助が『ぬちぬぐすーじさびら』と言って、歌と踊り、お笑いなどで生きる力をもう一度沸き立たせようと芸能を供給した。新たなコラボレーションの形を模索するため次回は有料配信で、ネーネーズや芸人も誘って開催しよう」と呼び掛け、にぎやかに締めた。
 (田中芳)