「奇跡のピアノ」触れ曲作り Kiroro金城綾乃さん 「曲は未完成、福島の皆さんと仕上げたい」


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「また『彼女』(奇跡のピアノ)に会いたい」と語るKiroroの金城綾乃=浦添市のFM沖縄

 柔らかく包み込むような音色と、思いのぎっしり込められた歌詞がラジオの電波に乗って発信された。11日、FM沖縄の人気番組「ハッピーアイランド」にKiroro(キロロ)の金城綾乃(ピアノ)が出演し、現在制作中の新曲を紹介した。題名は「奇跡のピアノ」。東日本大震災で津波に流されずに残った福島県いわき市立豊間中学校の「奇跡のピアノ」を生で聴き、触れて作った曲だ。金城は「曲は未完成なので、福島の皆さんと一緒に仕上げたい」と目を輝かせる。

 ラジオに出演した日は東日本大震災から9年。急きょ宅録したデモ音源で流された。「制作途中の曲を皆さんに聴かせるのはどうなんだろうと思ったが、聴いてくれた人から思いが伝わったと言ってくださった」と笑顔で語る。

 金城が「奇跡のピアノ」と出合ったのは、1月に琉球新報ホールで開かれた「いのちよ響け『奇跡のピアノ』沖縄コンサート」。「プライベートでコンサートに行った。思いあふれる公演に感動した。終演後どうしてもピアノに触れてみたいと思い、『未来へ』を弾いた」

 「奇跡のピアノ」に触れた金城は「弾いていると女性のような印象を受けた」という。「最初はとても優しくて、柔らかい音色だが、弾き進めていくうちに奥の方が重たい感覚がした。温かさや苦しさなど震災で傷を負ったいろんな感情が伝わった。『彼女』が復活したことは、すごいことだと思った」

 それから金城は「奇跡のピアノ」をテーマにした曲づくりに励む。「始めはAメロとBメロだけ仕上げて、しばらくサビの部分が思い浮かばなかった。3月のある日にうたた寝していると、メロディーと歌詞が夢に出てきて、一気に仕上がった」

 震災当日、豊間中学校では卒業式が行われ、キロロの「未来へ」がピアノの伴奏と共に歌われていた。その後津波が押し寄せたという。「コンサートであの日『未来へ』が歌われていたことを知った。『彼女』とは出合うべくして出合ったのだと思った」

 キロロはこれまでに平和や命などをつづった楽曲を作ってきた。「家族が一日一日普段通りに元気で過ごしていることが、どれだけ幸せで大事なことなのかを3月11日、そして6月23日が来るたびにいつも思う。キロロとしてその思いを、歌にしてこれからも届けていきたい」

 現在、歌詞は1番で終わっている。「2番は福島の皆さんと一緒に作っていきたい」と力を込めて語る。「公演で福島で今起きている知らない事実を聞いて衝撃を受けた。自分だけでこの曲を書いてはいけない。福島の方々と触れ合いながらゆっくりとこの曲を仕上げていきたい。『彼女』にも会いに行きたい」と思いをはせた。
 (金城実倫、青山香歩)