経済特区、道半ば 「酒税」継続 疑問の声 税制優遇制度〈沖縄振興を問う~自立への姿~〉⑧


経済特区、道半ば 「酒税」継続 疑問の声 税制優遇制度〈沖縄振興を問う~自立への姿~〉⑧
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 「魚より釣り具を」―。2002年、沖縄振興特別措置法ができるのを前に当時の稲嶺恵一知事はこう述べて、企業誘致を進めるために県外から進出する企業や県内企業に所得控除など税の優遇制度を創設するよう求めた。これに応えた政府は、新たに企業が税の優遇を受けられる複数の制度を設けた。名護市は金融特区に指定され、沖縄のダイナミックな成長を支える経済金融の拠点になることを掲げたが、「道半ばの状況」(内閣府関係者)だ。県経済は市場の規模が小さく、投資先に向かないとの見方もある。

■適用200億超

 沖縄振興関連税制には(1)観光地形成促進地域(2)情報通信産業振興地域・特区(3)産業高度化・事業革新促進地域(4)国際物流拠点産業集積地域(5)経済金融活性化特区―の5特区・地域がある。県のまとめによると、適用実績は2012~18年の7年間で国税分で444件、103億8千万円、地方税分で2297件、102億4800万円となっている。

 県は21年3月31日に措置期限を迎える観光地形成促進地域など六つの制度と、同年5月14日に同じく期限切れを迎える酒税軽減措置について、沖縄振興特別措置法の期限を踏まえ、1年間の延長を求める方針だ。

■厳しい見解

 一方で、沖縄の日本復帰に伴う激変緩和措置として続けられてきた県産酒類にかかる酒税の軽減措置については「激変緩和措置なのに50年続くのはどういうことか。いつまで復帰特別措置を続けるのか」(自民党議員)との厳しい見方が強い。振興計画の見直しを機に、税制軽減という業界一律の措置からの見直しの可能性が強まっている。

 内閣府関係者は政府が管理する非常用のタイ米を活用するアイデアを披露し「泡盛も本気で取り組めば2、3年で1兆円産業になれる。泡盛でスコッチウイスキーほどのブランディングができれば、酒税も入ってくる。一流になる技術を極めることが大事だ」と指摘する。

 上原良幸元県副知事は「沖縄に比べ、活力がなく衰退する地方も増えている。次の振興計画に『振興』という言葉はそぐわないのではないか。全国レベルを目指す事業推進ではなく『先行』して日本のリード役を果たすための事業施策を推進する法律と計画、予算措置が求められる」と強調した。(当間詩朗)
  (随時掲載)