「泡には触れないで」 川に浮かび、街に舞う 米軍消火剤流出に市民が恐れ  宜野湾市


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【宜野湾】川に浮かび、空中を舞う白い泡の塊―。米軍普天間飛行場から発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が流出し一夜明けた11日、大量の消火剤は宜野湾市嘉数と大謝名の境を流れる宇地泊川と周辺の住宅街まで広がっていた。「泡には触れないでください」。鳴り響く防災無線と異様な光景に、住民らは顔をこわばらせた。同飛行場の全面返還合意から12日で24年の節目。繰り返される事故に市民から早期返還を求める声が上がった。

米軍普天間飛行場から流出し、住宅地を漂う泡消火剤=11日午前8時11分ごろ、宜野湾市大謝名(金良孝矢撮影)

 午前7時半ごろ、川沿いに住む男性(50)は、川に浮かぶ大量の白い泡に不気味さを覚えた。強風が吹く度に浮遊する泡を見て、干していた洗濯物を慌てて取り込んだ。「川は元に戻せるのだろうか。基地は本国に返ってほしい」と不満を漏らした。

 市消防本部の消防隊員らは早朝から川周辺で除去作業にあたり、市や県の職員らが慌ただしく出入りした。草木に付いた泡に放水し、小さなバケツで回収するなど、慣れない作業に奔走した。周辺には物々しい光景を写真に撮ったり、流れる泡を不安げに見詰めたりする住民の姿があった。

 正午すぎ、海兵隊政務外交部長のニール・オーウェンズ大佐が除去作業の現場に到着。報道陣が詰め寄り、一帯は緊張感に包まれた。米軍の消防隊と米兵らも駆け付けたが、作業することなく撤収。早朝から作業を見守っていた市民の一人(16)は「こっちは迷惑を受けているのに、米軍は軽く考えているのでは」と不信感を募らせた。

 川が牧港湾と合流する河口付近で釣りをしていた男性(65)は防災無線を注意深く聞き「しばらく釣りはできないな」と寂しげ。「子どもや孫の代には基地がなくなってほしい」と道具を片付け、足早に帰路についた。

宇地泊川で泡消火剤の回収作業にあたる消防士=午後1時23分、宜野湾市(又吉康秀撮影)

 一方、同飛行場南側に接する第2さつき認定こども園(同市真栄原)は、園庭遊びを中止し、登園を控える保護者も見られた。