池袋暴走1年、涙の祖父「時が止まった」 帰らぬ娘と孫に「ごめんね、代わってやれなくて」


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涙を浮かべ事故から1年を振り返る上原義教さん=18日、那覇市泉崎の琉球新報社

 東京・池袋で高齢ドライバーの乗用車が暴走し、県出身者の松永真菜さん=当時(31)=と長女莉子ちゃん=同(3)=の2人が亡くなり、10人が重軽傷を負った事故から19日で1年となる。松永さんの父親上原義教さん(62)=那覇市=が18日、琉球新報の取材に応じた。上原さんは「時が止まっていて、まだ夢をみているような感覚。いまでも東京から里帰りしてくれるのでは」と声を詰まらせ涙を浮かべた。

 「真菜、莉子、ごめんね。じいちゃんが代わってやれなくて」。真菜さんと莉子ちゃんが沖縄に帰ると、近所の公園へ上原さんも遊びに行った。事故後、公園に行くことがしばらくできなくなったが、最近になり、ようやく足を運べるようになった。

 莉子ちゃんが元気に走り回り、その姿を追う真菜さんの背中を見詰めていた。公園に行くと、いまも2人の姿が浮かぶ。2人を思い、歩くと涙が頬をつたう。後悔と無念さで、胸が苦しくなる。

 真菜さんの夫、拓也さんは16日に動画を公開し、現在の心境や交通死亡事故を減らしたいという思いを語った。上原さんも動かされた。「彼の懸命な姿勢に励まされる。一人でも被害者を減らしたい。私が取材を受ける理由の一つは、彼の思いに応えたいから」

 2人の一年忌を東京で拓也さんと迎える予定だったが、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を受け東京行きは見送った。

 車を運転していた旧通産省工業技術院元院長、飯塚幸三被告(88)は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で在宅起訴された。公判に向けた調整が続いているが、開廷への見通しは立っていない。

 裁判には被害者参加制度を使って参加する予定だ。これまでに飯塚被告から謝罪の連絡などはない。裁判を通して被告の考えを聞くつもりだ。「どんなに憎んでも、娘と孫は戻ってこないし、許すことはできない。私にできることはないかもしれないが、(被告は)どういう思いなのか、直接確かめたい」。上原さんは肩を震わせ、ハンカチで涙を拭った。

(当間詩朗)