失業率は3%から37%に コロナ禍のハワイで嘉数さん


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 渡航自粛や外出禁止が発令される中、ハワイの人々はどのように生活しているか。国立天文台ハワイ観測所に勤める天文学者で沖縄科学技術大学院大学(OIST)財団評議員を務める嘉数悠子さんに電子メールを介して聞いた。

   ◇    ◇

 ―州外からの渡航者制限はどのような状況か。

 「ハワイでは渡航者に対して、14日間の自主隔離を義務付けている。この政策は3月21日に告知、26日から発動した。この時点でハワイの感染者数は48人だった。大胆な水際対策の強化で米本土や海外からの渡航者数が1日3万人から数百人のレベルになった」

 ―医療資源をどう確保しているか。

 「医療資源、特にマスクは不足しており、早い段階で民間から医療機関へのマスク寄贈が呼び掛けられた。すばる望遠鏡をはじめとするマウナケア観測所群でも地元ヒロの病院にN95、サージカルマスク、ガウンなどを寄付した。3Dプリンターで製作したマスクなども寄付した。N95やサージカルマスクは医療機関へ寄付し、市民は布製マスクの着用が呼び掛けられている」

 ―地域経済への打撃は。

 「深刻だ。失業率は3%から37%へとかなり悪化した。連邦政府は全国民(市民権を持たない居住者も含む)に対し大人1人当たり1200ドル、17歳以下の子ども1人当たり500ドルの支給を始めた。ハワイ州は18歳以下の子どもを対象に無償で弁当を支給している」

 「失業手当の申し込みもオンラインで簡単にできる。ただ、手当の支給はまだ時間がかかるようだ。連邦政府の中小企業・個人事業主の支援策があり、8週間分の人件費(給与や社会福利を含む)を中心とする経費を補填(ほてん)するための資金を提供している。借入金利や賃料、水道・光熱費なども含められる。融資の形だが、指定された用途に使う限り返済義務がなく実質的な補償になる」

 ―州政府から住民への要請、呼び掛け方法は。

 「毎日、州知事がメディア向けにブリーフィングし、その様子がフェイスブックでライブ配信される。感染者のデータは州のサイトに毎日更新される。ホノルル市長も同様のブリーフィングを行い、SNS上でグラフや図を使って感染状況や政策を分かりやすく伝えている」

 ―市民生活の状況は。

 「郵便局やスーパーなどでは列に並ぶ際、2メートルの間隔を開けるためシールが貼られている。入場制限のある場所がほとんどだ。家では大掃除や片付け、ペンキ塗りをする人もいる。料理、特にパンやケーキ作りが大ブームでスーパーでは小麦粉などが品薄だ。Zoomを使った会議はもちろん、オンラインの運動教室も大人気だ。休校中の学校や大学もオンライン授業に切り替わり、インターネット会社は就学児のいる家庭に3カ月間無料でインターネットサービスを提供するなど地元に貢献している」
 (聞き手 座波幸代)