紅いもタルト、ちんすこうも…土産品に大量廃棄の危機 観光客減で業者からSOS「今こそ県民に食べてほしい」


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観光客の激減で売れずに残ってしまい大幅割引で売り出されるお土産品=23日、読谷村の御菓子御殿本店

 新型コロナウイルス感染拡大による観光客激減の影響が県産品にも及んでいる。県内でほとんどの土産物店、観光施設が休業しているため、観光土産向けの製品の販売が激減し、製造メーカーから「4月の売り上げは前年の1割しかない」などの悲鳴が上がっている。深刻なのは賞味期限のある食品で、大量の在庫が廃棄される危機に直面している。鍵を握るのは県産品の地場消費。関係者は「今こそ県民に食べてほしい」とSOSを発している。

 「新型コロナの影響により50%OFF」。沖縄土産の定番「元祖紅いもタルト」の御菓子御殿(読谷村)の本店には、各店舗から集めた在庫が山のように積まれている。県内11店舗あるが、現在営業しているのは本店だけだ。工場の生産ラインも止まり、再開のめどは立っていない。

 主力の紅芋タルトの賞味期限は1カ月。ちんすこうも3カ月程度だ。観光客激減に清明祭の自粛も重なり、4月の売り上げは前年の1割程度に落ち込んだ。廃棄処分になる前に大量の在庫を売らなくてはいけないため、17日から大幅割引して販売している。
 澤岻英樹社長は「人件費などを考えると、もうけはほとんどない。廃棄にしてしまうよりは仕方ない」と厳しい表情を浮かべる。

 販売店舗を持たない事業者はさらに深刻だ。ジーマーミ豆腐やラフテー(豚の角煮)などの加工食品を製造するあさひ(那覇市)は、休業した土産品店からの返品が相当数に上る。赤嶺陽司常務は「土産品店や観光施設が休業になり、販路がない。新たな販路を探そうにも、どの企業もテレワークになっていて商談も難しい状況にある」と途方に暮れる。

 土産品に関わるのは製造メーカーだけでなく、原材料の生産者、包装紙の印刷業者まで多岐にわたる。
 県観光おみやげ品公正取引協議会の松本元一会長は「観光客が戻ってくるまで、雇用を守り、工場の生産力を落とさないことが業界には求められている。そのためにも今県民に県産品を買ってほしい」と望んだ。
 (玉城江梨子)