首里城、動き出す再建(中)暮らしと観光、共存願い まちづくり研究会


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第32軍司令部壕に関連するトーチカ跡を見学する「すいまち塾」の参加者=1月18日、那覇市首里当蔵町

 1月18日、首里城近くの戦跡に人だかりができていた。NPO法人首里まちづくり研究会(すいまち研)が開催した勉強会「すいまち塾」の参加者だ。勉強会は首里城火災後に「行政に再建などを働き掛けるだけでなく、自分たちも首里の歴史や文化を学ぼう」と企画された。すいまち研をはじめ、首里地域のまちづくり団体は火災を機に活動を活発化させる。5月下旬ごろには、まちづくりに関わる6団体が「首里城周辺まちづくり団体連絡協議会」を設立する予定だ。

 すいまち研は2005年、県建築士会首里支部まちづくり委員会と地元のボランティア団体が合流して発足した。理事長の伊良波朝義さん(53)は「首里城は琉球文化の礎で、なくてはならない存在だ」と語る。昨年10月31日未明、那覇市真地の自宅から「なくてはならない存在」が炎にのまれていくのを見た。「言葉では言い表せない。脱力感というか、早く(火が)消えてくれと願うしかなかった」。すいまち研の各会員が首里城は私たちにとってどういう存在だったのかを見詰め直し、すいまち塾など新たな活動が生まれた。

 すいまち研が設置を提案した首里城周辺まちづくり団体連絡協議会には、古都首里のまちづくり期成会、首里振興会、御茶屋御殿復元期成会と城西、城南両小学校の校区まちづくり協議会が参加予定だ。シンポジウムやワークショップを通して持続可能なまちづくりについて学び、意見を集約する。秋ごろには県や沖縄総合事務局、那覇市などに提言する予定だ。伊良波さんは「近年、首里城周辺地域はオーバーツーリズムによる交通渋滞などに悩まされていた。地域の暮らしと観光が共存できる再建を目指し、みんなで勉強していきたい」と話す。

 県は24日、首里城復興の基本方針を発表した。県が1984年に首里のまちづくりの方向性を示した「首里杜(すいむい)構想」を、時代に合わせて見直し「(首里城周辺の)『首里杜地区』が琉球文化を体現できる場となるよう取り組む」とした。まちづくり団体や那覇市議会、市が県に要請した円覚寺や中城御殿、御茶屋御殿の復元についても一定程度、反映された。伊良波さんは基本方針を評価した上で「具体的なものは示されていないので、連絡協議会の提言を行政の判断に役立ててほしい」と願った。

(伊佐尚記)