【中・北部】米軍基地に隣接する名護市辺野古や金武町の新開地エリア、北谷町砂辺は米兵向けの飲食店やタトゥー(入れ墨)店などが軒を連ねる。だが、新型コロナウイルスの影響に伴う米軍の行動制限で、街からは米兵たちの姿が消えた。県民の利用自粛も重なり、店舗からは「家賃も払えない」と悲鳴が上がる。
第18航空団や第3海兵遠征軍は4月に入り軍人や軍属、家族らの基地外での行動を制限し、公共交通機関や飲食店の利用を禁止した。
「アップルタウン」と呼ばれる辺野古の街でも飲食店の休業が目立ち、シャッターが閉ざされている。タトゥー店「ゼロ・タトゥー・シュワブ」は週末には海兵隊員らでにぎわっていたが、1カ月以上ほとんど予約はないという。音楽も消された店内で従業員のラッシュ・ジョナサンさん(30)は「1人で(音楽を)流してもね」と吐き捨てるように言った。
金武町の新開地エリアでも飲食店のほとんどが休業し、数軒がテークアウト用に夜の営業を続けているのみだ。通りを歩くわずかな人もほとんどが県民で、米兵たちの姿は見られない。40代女性が営むカレー店も米兵を主な客層にしていたがコロナ禍で客足が遠のき、現在は休業中だ。女性は「米兵は客単価が大きかっただけに、戻ってきてほしい」と切実に語る。
複数の感染者が出た嘉手納基地では「基地内外の行動ガイド」を打ち出し、軍人や軍属に加え基地内で働く日本人従業員の行動も大幅に制約した。基地外にある飲食店の利用にとどまらずテークアウトも禁止したため、周辺の経営者らは「家賃が払えない」「規制解除後も米兵が戻ってくるか心配だ」と口をそろえる。
一方、北谷町砂辺の海岸沿いには毎日夕方になると多くの米軍関係者の姿が見られる。犬と散歩する人、缶ビールを片手に談笑するグループなどさまざまだ。砂辺に住む女性(44)は「県民も含め海岸を訪れる人の多くがマスクをせず、他人との距離も取っていない。グループで座り込み、飲酒している人もいる。周辺住民を感染リスクにさらす可能性があることを知って欲しい」と訴えた。
(塚崎昇平、喜屋武研伍、当銘千絵)