「経済で亡くなる人もいる…」 沖縄県「唐突に」休業要請解除に転じた事情


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会見で、7業態の一部を除き、休業要請を14日に解除する方針を発表する玉城デニー沖縄県知事=11日午後、県庁(代表撮影)

 「現状況下でどのような点で整合を図るかは相当に議論してきた。しっかり整合が取れていると考える」。玉城デニー知事は11日の会見で、当初20日まで延長すると予定していた事業者への休業要請を14日に大方解除するとした点の整合性について記者から問われ、こう反論した。玉城知事は5日の会見では大型連休で8千人が来県したとして、「疫学的に」20日までの2週間の警戒が必要と説明していた。唐突感が拭えない県の方針転換の背景には、これまでの感染防止に重きを置いた対策から経済回復を両立させる政策にシフトしたことがある。

 玉城知事は政府の5月末までの緊急事態宣言延長方針を受け、5日の会見で休業要請について「大型連休が終わってから、潜伏期間を考えると2週間は絶対必要だと思った」と強調していた。

 県は当初、感染者がいなかった2月21日からの1カ月間で警戒が緩まり、県外からの移入例による感染が広まった反省を踏まえ、休業要請を2週間としていた。社会経済活動の早期再開も視野に入れ、県の専門家会議の高山義浩医師が作成した「活動再開へのロードマップ」を公表した。

 一方で県には疲弊する企業から早期の休業要請の解除を求める声が相次いでいた。県幹部の一人は「ロードマップを厳密に守ると5月31日の緊急事態宣言を越えても、これらの指標に(経済活動の再開が)引っ掛かる可能性がある」と懸念を示した。

 政府が沖縄を含めた全国都道府県に発令した緊急事態宣言を14日に解除する方針を検討し始めたことを好機と捉え、事業者への休業要請を大方解除する方針を決めた。5月に入って県内で新たな感染者が確認されていないことも判断材料となった。

 先の県幹部は「疫学的知見からはパーフェクトな方がいいのかもしれない。だが実際にはコロナで亡くなる人もいるが、経済で亡くなる人もいる。唯一無二の回答はないかもしれないが、総合的に判断した」と難しい判断だったことを明かした。

 一方、今回の休業要請の大方の解除には、医師らでつくる県の専門家会議のメンバーから異論があった。これまでの来県自粛要請や休校を打ち出す際の政策判断は専門家会議を開いて意見を聞いて決定してきた。今回の休業要請解除は専門家会議を開催せずに、メールや電話で会議のメンバーから意見聴取したのみだ。その一方で県庁内で経済疲弊を憂慮する声も相次いでおり、それも重視する判断に傾いた。

 玉城知事は会見で「医療体制と経済のどちらかをてんびんにかけると想定したわけではない」と強調したが、経済活動の「自粛要請」から「活動再開」に向け、かじを切ったことを鮮明にした。
 (梅田正覚、比嘉璃子)