[日曜の風]検察庁法改正案 禁断の一体化阻止を(浜矩子、同志社大大学院教授)


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 政府・与党が「検察庁法改正案」をごり押しで国会通過させようとしている。内閣の裁量で、検察幹部の定年延長を実施できるようにする。それを狙っての改正案である。

 これを暴挙と言わずして、何というべきか。平時でも愕然(がくぜん)とする悪行だ。いわんや、新型コロナウイルスの襲来という前代未聞の窮状に全人類が当面しているこの時、このようなとんでもない提案を平気の平左で押し出して来るとは、どういう神経か。すかさず「火事場泥棒」のレッテルが張られたのは、至極、当然だ。

 この愕然たる展開を目の当たりにして、二つのフレーズが頭に浮かんだ。その一が「恐怖のポーランド化」。その二が「禁断の一体化」である。

 今、ポーランドは事実上の独裁体制下にある。「法と正義」というおよそ名は体を表さないネーミングの政党の党首、ヤロスラフ・カチンスキによる恐怖政治が、人権と言論を抑圧している。

 その一環として、司法を政治の支配下に置こうとしている。政府による裁判官の任免権が確立された。最高裁判所の長官についても、「法と正義」の息がかかった裁判官たちによる選任がやりやすくなるように体制が整えられた。これらの制度変更に異議を唱えた裁判官については、政府による解任が可能になった。

 裁判官も検察官も、政治の関与から完璧に隔離されていなければいけない存在だ。だが、ポーランドにおいて、そして日本において、この不可侵であるはずの原理が侵されようとしている。

 安倍政権は、「禁断の一体化」が大好きだ。お気に入りの一つが、「金融と財政の一体化」だ。安倍晋三首相は、政府と日銀の関係は親会社と子会社の関係のようなものだと言ったことがある。中央銀行を、政府のためにカネを振り出す打ち出の小槌だと心得ているのである。財政の必要に応じて、いくらでも国債を引き受ける。金融政策をそのための隠れ蓑(みの)にしている。これは経済ファシズムだ。

 そして今度は、検察と官邸の一体化をもくろんでいる。何と背筋の寒くなることか。これはファシズム政治以外の何物でもない。断じて許してはならない。

(浜矩子、同志社大大学院教授)