【東京】名護市辺野古の新基地建設を巡り、サンゴ類の移植を沖縄防衛局に許可するよう県に指示した農林水産省の対応の適法性を審査する国地方係争処理委員会の3回目の会合が22日行われ、県から玉城デニー知事、農水省からは山口英彰水産庁長官が意見を陳述した。玉城知事は農水省の指示は「農水大臣が沖縄防衛局と一体となって対応しているとしか考えられない異常な事態」だと批判し、指示を取り消して処分を知事に委ねるよう求めた。
ウェブ会議形式で行われた陳述で玉城知事は、辺野古・大浦湾海域の生物多様性は、世界自然遺産として登録されている知床や白神山地などを上回り「辺野古・大浦湾海域にとって代わることのできる場所はない」と貴重性を指摘した。同海域でのサンゴ採取は極めて特殊で「検討事項は多岐にわたる」と述べ、審査に時間がかかる理由を説明した。
農水省が他の移植許可事例と比べて申請内容に不十分な点はない、と防衛局の申請内容を評価していることを念頭に、過去に行われたサンゴ移植の成功率は高くないとして「失敗事例について真摯(しんし)な反省と改善を行い、移植技術を向上させる必要がある」と述べた。
一方、水産庁の山口長官は、移植が認められなければ「サンゴ類が死滅することを容認することになる」と、移植の必要性を述べた。軟弱地盤の改良に伴う設計変更申請が見込まれることを県側が判断先送りの理由の一つにしたことについては、埋め立て承認が効力を持っており「承認に基づく埋め立て工事が実施されることを前提に事務処理すべきだ」と述べた。会合の終了後、富越和厚委員長は、陳述を通じて「争点が出てきた」との認識を示した。今後の会合は「1回では済まないと思う」と話し、審査期間となる6月30日までに複数回開く可能性を示した。