<甲子園中止の衝撃・中>「自分は通用するのか?」進路に悩む選手たち スカウト側も動けず


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甲子園中止や県独自の大会、今後の進路などについて話す沖縄尚学の(左から)與谷友希、永山蒼、崔哲〓=22日、那覇市の沖縄尚学高

 集大成を披露する全国高校野球選手権がなくなり、進路に戸惑いを感じる選手もいる。

 昨年の秋季九州大会に出場した沖縄尚学。エースナンバーを背負う永山蒼投手は社会人野球で活躍したいとの夢がある。「スカウトが来る全国大会がなくなり、自分がその道で通用していけるか分からない」と決めあぐねている。チームメートの與谷友希主将や高校野球を夢見て台湾から留学中の崔哲瑋らは大学進学を検討する。2人とも大学卒業後も野球での活躍を念頭に置く。

 他校でも選手それぞれが希望する進路選択を支えようと指導者らが情報収集などに取り組んでいる。

■現場の変化も

 新型コロナの影響で、球児と会えない日々は、進路相談の現場にも変化を生んでいる。無料通信アプリLINEや電話などを活用する場面が増えている。春季大会で4強入りした中部商の奥田誠吾監督は、LINEで進路希望調査を取った。約3割が野球での進学や就職を予定しており「積極的に連絡を取るようにしている」と選手の精神面も気に掛ける。大学によっては8月頃からセレクションを行うところもある。だが、今年はコロナの影響で日程が流動的だ。そのため、早い段階から大学とも連絡を取り、募集時期などの情報収集に努める。

 ある野球部の関係者は、スカウトが多く集まり実力をアピールできる甲子園の中止は選手の進路希望に影響するとみており「必然的に大学進学へと切り替える選手が多くなるんじゃないか」と話した。

■スカウト陣の思い

 これまで、県勢選手を多く受け入れてきた九州共立大野球部の上原忠監督は、甲子園中止の影響について「うちに限っていえば、あまりない」と語る。昨年から注目している球児やその指導者らへのアプローチを続けている。7月下旬から8月上旬には、チーム練習を体験できる「練習会」を毎年開く。野球で将来を見据える選手に「十分に実力を発揮できる場はある」と声を掛ける。

 一方、新たな人材の発掘には苦慮しているようだ。大会や公式試合がその場になるが、公式戦が少ない分「逸材が埋もれてしまっている可能性もある」という。沖縄出身の上原監督は県内の監督らとのつながりもあり「沖縄の選手には特に思い入れがある」と例年通りのスカウトを心がけて手段を模索する。

 プロ野球のスカウト陣はなかなか動けていないのが実情だという。福岡ソフトバンクの担当は3月中旬から2カ月以上、活動ができていない。九州地区をカバーする同球団の岩井隆之アマスカウトは「高校生は冬を越えて、3年生の春から夏にかけてものすごく成長する。この期間に試合も練習も見られていないのは厳しい」と真剣勝負のプレーを評価できない現状を嘆く。今後、県大会などが開かれる場合に「無観客となっても、スカウトについては入れてもいいと判断してくれればいいが」と高野連の対応を注視している。 (上江洲真梨子、長嶺真輝)