[日曜の風・室井佑月氏]おもねることじゃない 大人な態度


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 安倍晋三首相は、検察庁法改正案の今国会成立を断念した。それは世論の反発を食らったからだ、そう、さまざまな新聞に書かれてあった。

 Twitter(ツイッター)で「#検察庁法改正案に抗議します」という投稿が600万を超えた。Twitterデモだ。俳優の小泉今日子さんや歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんなど、有名人が声をあげ拡散してくれたのも大きかった。

 安倍首相も18日の検察庁法改正案の今国会成立断念を語った会見で、「この法案については国民の皆さまから、さまざまなご批判がありました。で、そうしたご批判に、しっかりと応えていくことが大切なんだろうと思います」と言っていたので、相当このTwitterデモが効いたのだろう。

 Twitterを使って国に意見を言う方法は、どうも効果があるみたいだ。それは大勢の人たちが固まって意見を言ったから効果があったわけである。権力に人数で対抗したから、勝利できた。

 もちろん、あたしたちが固まることに水を差すような意見をいう人もいる。タレントの指原莉乃さんがテレビで、『#検察庁法改正案に抗議します』というTweet(ツイート)がまわってきても、自分は勉強不足なので乗らなかった、というような話をしたらしい。自分の意見を言い、『#検察庁法改正案に抗議します』というTwitterデモに参加した小泉今日子さんと比べられ、指原さんのほうが大人な対応だと称賛する向きもあるようだ。

 大人ってなんだろう、と思った。自分の言葉で、自分の考えを言える人じゃないのか? まだこの国は、女が発言をするのを嫌がる人が多いのか? 政治的な発言なんてもっともしてはいけないことであるというのか?

 指原さんは以前、安倍首相とご飯を食べにいっていたのは事実。そして、固まった複数にならなきゃ意味がなくなるデモに水を差したのも事実。

 この国の大人な態度とは、強いものにおもねる態度ってことなのだろうか。そういう間違った世の中にこそ水を差したい。

(室井佑月、作家)