独自大会に「力出し切る」 選手は「強気で向う」 指導者は「命が一番」「大成功させる」と複雑


社会
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 沖縄県高校野球連盟(岩﨑勝久会長)は23日、県独自の大会を7月に開催することを決めた。新型コロナウイルスの影響で、球児の大きな夢でもあった全国高校野球選手権(夏の甲子園)の中止に落胆していた中での吉報に球児や関係者らは歓喜し、独自大会の開催に前向きな声が多く上がった。一方、感染防止対策について県高野連は今後協議を進めるとしており、一部の関係者からは「感染防止は本当に大丈夫なのか」などと心配する声もあった。

選手の声 練習期間の短さに不安も

甲子園の中止が決まった日。県独自の大会を信じ、練習を続けていた興南の選手たち=20日、那覇市の興南高校

 県高野連が独自の県大会開催を決めた。最後の夏となる3年生たちは「最後に力を出せる場ができてうれしい」と一様に歓迎した。一方、示された開幕の日まで練習期間が約1カ月しかないことなどに不安の声も上がった。

 春は右肩の違和感で1イニングの登板にとどまった北山のエース、仲宗根アレキサンダー海吏は「甲子園がなくなったので、最後に力を出し切れるのはうれしい」と声を弾ませた。140キロ超の直球を武器とする本格右腕は将来プロを目指している。スカウトが視察に来れば「強気で向かっていく自分の持ち味を出したい」と力を込めた。

 春に連合チームとして初めて16強入りした開邦・南部農林・辺土名・真和志。開邦の金城温大主将や真和志の仲宗根匠ら4人の3年生は1年生からチームを組んできた。同じチームで出場するかは決まっていないが、金城主将は「匠と最後にバッテリーを組みたい。8強まで行き、力を出し切って受験勉強に切り替えたい」と意気揚々と話した。

 秋は4強入りしたが、春に初戦敗退の屈辱を味わった具志川の外間琉斗主将は「今まで必死にやってきた成果が出せるのはうれしい。受験前の区切りができた」と歓迎した。ただ1カ月半にわたりチーム練習はできていない。「1カ月で動きを元に戻せるか不安はある」と漏らした。


指導者の声 前向きに受け止める 一方で「命が一番」と懸念

 高校野球の指導者からは開催を前向きに受け止める一方、「大会ができるのはうれしいが、人の命が一番大事だ」と新型コロナウイルスの感染リスクなどに懸念を示す声も聞かれた。

 昨年の県予選で優勝した沖縄尚学の比嘉公也監督は「第2波も考えると、できるだけ早い開催は大賛成だ」と話した。1カ月という準備期間の短さはあるものの「やると決まったら連続優勝を目指す。大会を大成功させたい」と開幕へ意気込みを見せた。

 日本ウェルネスを初の4強に導いた五十嵐康朗監督は学校にグラウンドがないことや梅雨で練習に支障が出ることを懸念した。それでも「大会があれば選手の気持ちは高まる」と独自大会の開催を歓迎。これまでも工夫して練習に取り組み、春も本番まで練習試合なしで4強まで勝ち進んできたとし「チームを一番良い状態にして臨みたい」と力を込めた。

 一方、感染リスクもある中での県大会開催に複雑な心境を吐露する指導者もいた。

 自主練習も含めて部活動休止期間中の指示は一切していないという指導者の一人は「3年生にとっては喜ばしいが、感染を怖がっている人もいる。高齢者など弱い立場の人がいることも考えないといけない」と課題を挙げた。