「人間が人間でなくなる」 親川委代さん 壕の中で(8)<読者と刻む沖縄戦>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
本部町山川の壕から見る伊江島

 75年前の沖縄戦を振り返り、親川委代さん(85)=那覇市=は「人間が人間でなくなる」と語ります。その一つは米兵による非道な行為です。

 「上陸用舟艇で海岸にやってきた米兵が女性を捕まえ、むごいことをしたんです。私は幼かったので、その意味が分かりませんでした。戦争の犠牲です」

 もう一つは、委代さん自身のことです。鹿児島を飛び立った特攻隊を応援したのです。軍艦に当たるのはまれで、伊江島周辺で攻撃され、木っ端みじんに散ってしまいました。

 《若い命が海中へと散ったのです。この悲惨な姿を私たちは応援したのです。敵艦に当たれば「やったー、戦果を上げた」。当たらず、海中に散れば残念がりました。

 国の勝利のみ、これこそが軍国教育です。国家に尽くすことが当たり前でした。このことは今まで戦争体験者として誰にも語れなかった心の闇でした。》

 委代さんは長年、遺骨収集活動に携わってきましたが、特攻隊を応援したことへの罪悪感から自身の体験を語ることはしませんでした。2009年、鹿児島県の知覧特攻平和会館を訪れ、遺影にわびました。

 「人間が人間でなくなる」。壕の中から沖縄戦を見つめた委代さんは、この言葉をかみしめています。
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 親川委代さんの体験談は今回で終わります。次回から安里一三さんの体験を紹介します。