4月の県内観光入域客数は前年同月より9割減少する7万7千人となり、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言で観光が完全に停止した状態が改めて数字で示された。緊急事態宣言が今月25日で全面解除され、6月以降は航空減便路線の復活の動きがあり、政府による国内旅行のキャンペーンも夏に始まる。リーディング産業である沖縄観光の回復に向けて、感染症に強い「安心安全な観光地」づくりが観光客を呼び戻す鍵となる。
観光客の受け入れ再開が見え始めている一方で、観光業界は新型コロナウイルスの第2波を警戒し、徹底した感染防止や医療体制の強化を県に求めている。ウイルスの移入リスクを防ぐため、空港や港湾での発熱者へのPCR検査の実施など、徹底した水際対策を求める声が上がる。
水際対策の強化を
県は、発熱者を発見するためのサーモグラフィーを那覇空港の国内線に設置している。しかし、仮に高熱が検知されても、保健所の連絡先などが書かれたチラシを配布するのみの対応となっている。
国際線では検疫法に基づいて診察の実施や患者らの隔離などの措置を実施できるが、国内線では法整備がされておらず、強制的に実施することはできない。
県内ホテルの経営者は「感染者を特定する仕組みができておらず、サーモグラフィー設置の意味がない。PCR検査とセットにするべきだ」と指摘する。
県は水際対策の強化について具体的な対応にはまだ動いていない。空港関係者は「サーモグラフィーの設置にも時間がかかった。もっとスピード感が必要だ」と話し、早急な対応を求めている。
観光と医療の連携
観光客の受け入れ再開に向けて、各業界では新型コロナ感染防止のためのガイドラインを定めているが、「3密」防止などの感染予防策にとどまる。
県ホテル協会の平良朝敬会長は「ホテルで感染疑い者が出た場合、客室に隔離すべきか、どこかに移動させるべきなのかなどの対応は、ホテル側だけでは決められない」と話す。
発熱者や感染疑い者が出た場合の対応は行政や医療側との連携が重要となる。
県は20日、新型コロナウイルスの流行後初めて、医療関係者と観光事業者を集めた対策会議を開いた。観光と医療の連携を図り、観光客受け入れに向けたアクションプランを作る狙いがあるが、参加者からは「まだまだ議論が足りない」との声も上がる。
沖縄ツーリストの東良和会長は「常にウイルスの発生を危惧するような状態が続くようなら、プロモーションも少しずつしかできない」と指摘し、安全対策の確立を求める。
これまで自然や文化の魅力で誘客してきた沖縄観光だが、今後は「安心安全」であることが必須条件となる。観光客の受け入れ再開が本格化する前に、どれだけ対策を打てるかが試されている。 (中村優希)