辺野古の移植サンゴ、政府内で生存率に違い 防衛「大型100%」、水産庁「20%以下」


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辺野古新基地建設に伴い移植したオキナワハマサンゴの生息状況モニタリング調査の様子=2月(沖縄防衛局の資料より)

 【東京】名護市辺野古の新基地建設に伴うサンゴの移植に関連し、サンゴが移植後に生き残る確率を巡り政府の資料などで複数の数字が混在している。防衛省は国会で、国土交通省の過去の答弁を引き合いに小型サンゴで40%、大型サンゴで100%と説明した。一方、水産庁がまとめた手引書は、識者の見解として「20%以下」としている。国は、埋め立てられれば「死滅が避けられない」として県に移植許可を迫るが、識者は「サンゴを移せば大丈夫、というのは安易な考えだ。100%はあり得ない」と述べ、移植技術の難しさを指摘する。

 数字の混在が露呈したきっかけは、12日の衆院農林水産委員会でのやりとりだ。屋良朝博衆院議員(国民)が、辺野古のサンゴ移植を巡って農林水産省が県に指示したことについて質問した。

 屋良氏は水産庁の手引書を基に「沖縄で移植あるいは移設されたサンゴ群体は30万株を超えるが、多くのサンゴの植え込み4年後の生残率は20%以下」だと指摘した。

 この数字は水産庁が2019年3月にまとめた「改訂 有性生殖によるサンゴ増殖の手引き」の前書きで「サンゴ増殖技術検討委員会」の大森信委員長(東京水産大=現東京海洋大=名誉教授)の言葉として書かれたものだ。水産庁は「水産庁として押さえている数字ではない」と話す。

 本紙の取材に大森氏は、この生残率は自身のこれまでの研究をまとめた結果だと説明した。その上で、生き残る確率はサンゴの種類、植えた場所、植え方によって異なると指摘した。

 サンゴから断片の一部を採取して植え付ける「移植」と、サンゴを丸ごと移す「移設」でも生残率は変わり、辺野古でも行われる移設の場合、生き残る確率は上がる可能性があるとしたものの「それでも100%はあり得ない」と話す。

 一方、農水委で答弁した防衛省の辰己昌良総括審議官は、過去の国交省答弁として生き残る割合を「小型サンゴで40%、大型サンゴで100%」としたが、根拠は示さなかった。

 防衛省によると、この説明は昨年2月に衆院予算委員会での石井啓一国土交通相(当時)の答弁を引用したものだ。だが、これは那覇空港の滑走路増設事業に伴い13、14年度に移設されたサンゴの、17年冬時点で生き残っている割合だ。防衛省は「防衛省が承知している移植事例を紹介した」と話す。

 ただ、種類別で見ると、ミドリイシの生き残る確率は8~27%(移植後3年半~4年)にとどまるなど、直近の事例でも確率にムラがある。

 県水産課の担当者はサンゴの移植・移設について「技術が確立されたものではなく、(成功率は)そう高くない」と話す。
 (知念征尚)