換気を徹底、「密」避け映画館再開 文化の価値を観客実感<舞台の灯をつなぐ―コロナ渦の先に⑦>


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上演10分前まで扉を開け、扇風機を回して換気をする桜坂劇場=25日、那覇市

 新型コロナウイルス感染症の影響で県内の映画館は、県の休業要請などを受け4月から相次いで休館した。県が5月14日以降、多くの業種で休業要請を解除したことを受け現在は、那覇市の桜坂劇場をはじめ各館で営業再開の動きが広がっている。

 休館決定後、桜坂劇場や沖縄市のシアタードーナツ・オキナワは、映画監督の想田和弘氏と配給会社「東風」が立ち上げた「仮設の映画館」を利用している。4月25日にオープンした「仮設の映画館」は、新作映画をデジタル配信し、鑑賞料金が観客の選んだ映画館と配給会社に分配される。新作映画の公開延期が重なる中、「仮設の映画館」は、映画ファンの気持ちを劇場につなぎ止める一助となった。

 営業を再開した現実世界の映画館は、映画ファンに安心して映画を楽しんでもらえるよう、コロナの感染拡大予防に努めている。

 16日に営業を再開した桜坂劇場は、チケット購入時に観客の体温を測定し、名前と連絡先の確認を始めた。観客の入場をホールの30%程度に抑え、座席を隣人と2席以上開けるよう呼び掛けるほか、上演後の換気、上演10分前の入場など場内の空気を清潔に保つ努力を続ける。浦添市の20歳の男性はチケット購入時に個人情報が確認されることについて「万が一の事態を想定してのことなので気にならない。どうしても映画が見たくて初めて来たが、良い雰囲気の場所だと思う」と、劇場の対応を肯定的に捉える。

 「ユナイテッド・シネマPARCOCITY浦添」は22日に営業を再開した。空調機を使った換気や、券売機やインターネットを通じたチケット購入時に、観客同士が隣り合わないよう設定するなど「密」を避ける。観客が指で触れる券売機に透明カバーを付けて清掃をしやすくするなど、心遣いが透ける。

 シアタードーナツ・オキナワは29日から再開する。座席数30席ほどのため、ゆったりと映画が見られることで定評がある同館だが、観客は10人程度に絞る。換気の時間を長めにするため、上映映画の本数も減らす。休館中は、「仮設の映画館」とは別に、沖縄に思いを寄せる人々を対象に、座間味島が舞台の映画「ココロ、オドル」の有料配信にも挑戦した。

 同館の宮島真一代表は「現状を悲観していない。ステイホームが続く間、多くの人が音楽や映画に触れて過ごした。その中で、文化的なものがなければつまらないと、それらの価値を再確認したと思う。今後はオンラインでの配信などを通じて、来場される方以外とも感想を共有しながら、より作品のメッセージが人々に届けられるような運営をしたい」と前を向く。
 (藤村謙吾)
 (おわり)