進学の夢、なぜ壁だらけ…「望みは大学無償化」 支援塾に通う高校生


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講師のアドバイスを受けながら学習に励む女子生徒=28日、那覇市内の学習支援塾

 沖縄県が29日に発表した2019年高校生調査を見ると、経済的な困窮で自身の夢や希望を諦める生徒の姿が浮かび上がる。日頃の食生活も困窮世帯と非困窮世帯で違いが見られ、健康もむしばまれている状態だ。電子辞書や自分の部屋などを持てない割合も東京と沖縄で格差がある。理想の道を歩もうとする高校生の前に、自分の努力ではどうにもできない、大きな壁が立ちはだかっている。

 5月下旬、那覇市内にある無料の学習支援塾で学校帰りの高校生が勉強をしたり、絵を描いたりと思い思いの時間を過ごしていた。同市内の高校に通う女子生徒(17)は県外の国公立大学を目指して数学の課題に取り組む。「中学校の頃からの夢のために大学に行きたい。でも、経済的にも時間的にも不安だ」。将来の目標へ進むため、乗り越えるべき壁は多いと感じている。

 女子生徒の家庭は経済的に厳しく、新型コロナウイルス感染防止のためのマスクを買う費用も惜しいという。大学進学のための費用を考えるとアルバイトをしたいが、通っている高校では禁止だ。進学に向けて給付型の奨学金を受給したいと願うが「(奨学金の)種類が少ないように思う」。大学など高等教育の無償化制度の利用を視野に入れ、望みを託す。

 「県外の大学のオープンキャンパスに行ってみたい」と夢を抱くが、旅費の工面が難しい。「奨学金の選択肢がもっとほしい。県外への進学希望者のための支援があれば少しは心配がなくなるのに」と唇をかんだ。

 毎日、本を1冊以上読むほどの読書家だが、将来の夢のために好きな読書を我慢して勉強に打ち込む。「とにかく時間が足りない。今は頑張るしかない」とまっすぐ前を見つめた。

 那覇市内の別の高校に通う女子生徒(16)は、中学校の頃からこの支援塾に通う。通学の交通費の半額は県の補助制度でまかなっているが、通塾などその他の移動には交通費がかさむ。「モノレールなら往復で500円がすぐに消える」とため息を漏らす。

 新型コロナの感染が収まり飲食店が本格的に再開したら、高校卒業後の生活のためにアルバイトを始めるつもりだ。就職する予定で進学は考えていない。「高校にいる間に資格を取って安定した職業に就きたい」と将来を見据えた。