29日に公表された沖縄子ども調査の「高校生調査報告書」で、親の経済格差が子どもの健康格差や進路に直結している実態が浮かび上がった。制服代や通学費など高校生にかかる経済的な負担がかさむ中、学習に必要な電子辞書などの物品も持てない生徒が多数いることが分かった。
世帯所得で区分した困窮世帯では何らかの奨学金を利用する人が36・3%いた。
公立高校の授業料は多くの世帯で無償化されているが、教科書や制服などの費用や通学費などの負担に苦しむ声は多い。非困窮世帯でも13・5%が奨学金を利用していた。
「持ちたいが持っていない」物品として「インターネットにつながるパソコン」を挙げた生徒は困窮、非困窮を合わせて37・5%で、東京都の2倍に上った。新型コロナウイルスの感染拡大による休校でオンライン授業も広がる中、非困窮世帯も含めて県内の生徒には対応できる学習環境が乏しいことが明らかになった。高校の授業で広く使われる電子辞書も「持ちたいのに持てない」生徒が全体で29・7%いた。
困窮世帯の保護者のうち、61・4%が経済的に子どもに毎月の小遣いを渡すことができないとし、非困窮世帯(29・3%)と比べ高かった。
クリスマスプレゼントや正月のお年玉についても、できないとした困窮世帯が21・8%あった。
また、年1回の家族旅行についても、経済的にできないとする困窮世帯の保護者が90・3%に上った。非困窮世帯を加えた県全体でも73・4%に上り、東京の21・6%と大きな差が明らかになった。
大学に行きたいけれど…
理想的な進学先は大学だが、現実的には高校まで―。将来の進路について、困窮世帯では「大学まで」を理想の進路とする生徒が45・0%だったが、現実的とする生徒は33・7%に減った。非困窮世帯では大学を理想とする生徒が57・4%で現実的とする生徒は51・8%に減り、その減少幅は困窮世帯がより大きかった。家庭の経済状況のため、子どもが希望する進路を諦めている実態が改めて浮き彫りになった。
一方、2020年度から導入される大学など高等教育の「無償化」制度について「知らない」と回答したのが約8割に上った。
進路について理想と現実で違う選択をした理由については、困窮世帯は非困窮世帯と比べ「お金が心配」(80・6%)、「きょうだいの進学にお金がかかる」(43・5%)、「親や家族の面倒を見なければならない」(16・2%)の割合が高かった。
大学無償化の制度については、生徒の79・4%が「知らない」と回答。制度が進路選択に影響があるかどうかを尋ねる質問に対しては「ある」と答えた生徒は困窮世帯で53・9%を占め、非困窮世帯(42・9%)と比べ高かった。保護者では、困窮世帯で74・0%に上り、非困窮世帯(47・6%)と比べ26・4ポイントの大きな差が出るなど、学費が賄えるなら子どもを進学させたいとの思いが表れた。