筆頭研究者談話 沖縄大・島村聡教授、山野良一教授
29日に公表された沖縄子ども調査の「高校生調査報告書」で、親の経済格差が子どもの健康格差や進路に直結している実態が浮かび上がった。筆頭研究者の沖縄大・島村聡教授と山野良一教授に聞いた。
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沖縄県内は非困窮に区分されても、経済的にはかなり厳しい世帯が多い。本来、高校生の就労は避けるべきだがアルバイトをせざるを得ない生徒は多く、学業との両立への懸念は学校からも指摘される。労使で高校生の働き方を考える機会を、県が主導してつくるべきだ。
本調査では住宅も調べたが、沖縄は民間の賃貸住宅に住む困窮世帯が特に多い。公営住宅と異なり家賃負担が重い上、勉強部屋がないなど学習環境にも影響する。家賃助成の仕組みも考えなければならない。インターネットに接続されたパソコンの所有は全体的に少なく、IT環境にも県外と明確な差があった。
この調査後にコロナ禍が起き休校が続いた。自宅にオンライン授業を受けられるパソコンも勉強できる場所もないというIT格差、住宅格差は、学習格差として顕在化した。沖縄の子どもたちの学習保障にはこれらの課題解決が不可欠だ。
行政は現在、収入が減った人の差し迫った生活費への対応に追われるが、それだけでは学習環境は整わない。コロナの第2波、第3波に備えて長期的な視野で工程表を作る必要がある。
玉城知事コメント
消費者物価指数の係数をかけた場合の貧困線を基準とすると、困窮世帯の割合は前回の29・3%から4・7ポイント改善しているが、依然として高い割合を示している。困窮世帯の父親が長時間就労する傾向や暮らし向きが苦しいと感じている世帯も多いことなど、子育て家庭の生活実態は大変厳しい状況にある。
保護者からは「大学進学の夢をかなえてあげたい」といった声や、子どもたちからは「進学することで、親に負担をかけないか不安」などといった声が上がっている。
そういった保護者や子どもの声を真摯(しんし)に受け止め、心に寄り添い、全ての子どもたちが夢と希望を持って成長していける「誰一人取り残されることのない社会」の実現を目指して、子どもの貧困対策を推進していく。