DNA不一致で全頭検査 購買者の信頼回復と農家の安心を JAおきなわ


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 ブランド和牛「安福久(やすふくひさ)」などの子牛の血統不一致が相次いでいる問題で、JAおきなわ(普天間朝重理事長)は県内の安福久血統牛の全頭検査を決めた。JAおきなわの担当者は「購買者の信頼回復はもちろんだが、信頼を取り戻すことで競りの価格が戻れば、農家の収入回復にもつながる」と、検査に踏み切った理由を説明する。

 検査は、一連の問題で血統不一致が相次いだ安福久を父に持つ牛が対象となる。安福久は徳重和牛人工授精所(鹿児島県)の供用種雄牛。霜降りの入りが抜群で、高値で枝肉が取引されることから、肉用牛を育てる肥育農家から人気が高い。そのため安福久の血統を持つ子牛は競りで高値が付きやすい。

 5月の県内子牛取引価格は、1頭当たり平均46万9821円で、不一致問題が発覚する前の2月と比べて約14万円下落している。新型コロナウイルスの影響で枝肉需要が落ち込んだことが大きいとされるが、不一致問題が影を落としているという指摘もある。

 県内に安福久の子は約3千頭いるが、そのうち半数程度は受精卵移植の際に検査が完了している。JAおきなわが中心となって残りの約1500頭を検査する方針だが、1頭当たり約1万円の検査費用は農家の負担となる。JAおきなわの担当者は「自分の資産を証明するためにも、農家には費用負担をお願いする」と理解を求めた。

 血統不一致問題が発生して以降、県内市場に出入りする県外の大口購買者は、県内の子牛の全頭DNA検査を県に要望していた。県畜産課の久保田一史課長は「牛は農家に所有権があり、全頭検査の実施は県が決めることではない。県として、久米島の件の事実解明と再発防止対策を整理したい」と話す。

 安福久の子牛が全頭検査となることについて、県外大口購買者の1人である水迫畜産(鹿児島県)の水迫政治社長は「安心感につながる」と評価する。「家畜人工授精師の免許を発行する県が、授精師の管理を行うべきだ。安心して子牛を買える環境をつくってほしい」と求めた。