牛1頭1万円負担「知らないところで決まる」 農家「安福久」全頭DNA検査に不信


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 久米島町内で相次いだ黒毛和牛の血統不一致問題を受け、JAおきなわが主導して種雄牛「安福久」の血統を引くとされる全ての牛のDNA検査をする件で、農家に事前に説明のないまま実施が決まったことなどに、一部の農家から疑問の声が上がっている。新型コロナウイルスの影響で牛の取引価格が低迷し収入が落ち込む中で、検査費の全額農家負担は重い。県内の繁殖農家は、JAに対して説明を求めている。

 「安福久」血統牛の全頭検査は、5月29日にJAおきなわの生産部会である「JAおきなわ肉用牛生産振興協議会」の会合で決まった。同協議会は各地区の和牛改良組合の役員らが参加する。購買者から検査実施の要望があることを受けて、JAおきなわが同協議会で全頭検査を提案した。

 検査対象は当初、県内で約1500頭と見ていたが、約2千頭に上るという。検査費用は1頭当たり1万円で、今後はJAおきなわの畜産振興センター職員が農家に説明を行い、信頼回復のためにも費用負担への協力を呼び掛けるとしている。

 だが、事前の説明がないことに不信感を募らせる農家もある。石垣市の繁殖農家は「知らないところで物事が決まっていく。農家は全頭検査を了解していない」と話す。今帰仁村の繁殖農家も「農家の意見は反映されたのか。県も費用負担を一部助成する形を作ってほしい」と求めた。

 JAおきなわ畜産部の山城興治部長は「各地区の総意として議論した。購買者からの要望なので、検査で信頼回復につながれば結果的に農家の利益にもつながる」と説明する。ただ、生産農家の経営を考え、県にも費用負担を要請する考えも示した。
 (石井恵理菜)