発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物PFOSとPFOAが、北谷浄水場の水源汚染の原因になっている可能性があるとして、沖縄県企業局は4日までに米空軍嘉手納基地に立ち入り調査を申請した。県は2016年、同浄水場の水源である比謝川水系から高濃度のPFOSが検出された際に、嘉手納基地に立ち入り調査を申請した。だが米側は日本国内にPFOSに関する水質基準がないことなどを理由に調査を拒否した。
厚生労働省が今年4月、水道水中の有機フッ素化合物PFOSとPFOAの濃度に関する暫定目標値を設定したことを受け、県は4年ぶりに立ち入りを申請した。
県の棚原憲実企業局長は「基地内の土壌や地下水を調べ、高濃度の汚染が確認されれば国とも相談して改善策を検討したい」としている。地下水の吸い上げや土壌の撤去などを水質の改善策として計画している。汚染除去が技術的に困難であれば比謝川水系からの取水方法の見直しなども検討する。
県企業局配水管理課によると、申請は5月18日付。当初は米軍に直接申請しようとしたが、米側が沖縄防衛局を通じて申請するよう求めたため、同局を通じて申請した。4日現在で米側から立ち入りの可否に関する回答はない。
今年4月に米軍普天間飛行場で発生した泡消火剤流出事故では、県がPFOSやPFOAによる汚染が懸念されるとして立ち入り調査を申請し、米側が許可した。日米地位協定の環境補足協定が、環境に影響を及ぼす事故が「現に発生した場合」に立ち入りを申請できると定めている条件に合致したことが理由だった。
今回の立ち入り調査は事故が「現に発生した」ことが理由ではなく、過去に嘉手納基地で起きた漏出事故で土壌や地下水にPFOSやPFOAが蓄積し、比謝川水系を汚染し続けているとの想定で申請した。環境補足協定ではなく、1996年の日米合同委員会合意や県生活環境保全条例に基づく申請となる。4月の普天間立ち入りとは異なる規定を根拠としており、米側が許可するかが焦点となる。
(島袋良太)