<新型コロナOISTによる洞察>6 徹底検査で蔓延防止 他国から学んだ教訓


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 半年前に最初の新型コロナウイルス感染症(COVID19)の症例が報告されて以来、世界中の国々が幅広い対策を講じ感染拡大に対処してきました。今回はその過程で学んだ教訓を見ていくことにしましょう。

 ■迅速な対応

 国境封鎖や海外渡航者向けの厳格な検査・検疫システム等を迅速に取り入れた国は、ウイルス蔓延(まんえん)をより効果的に抑え込むことができました。オーストリアは早期に厳格な国境封鎖や都市封鎖を行い、隣国のイタリアに比べ影響を小さくすることに成功し、欧州における先駆けとして、厳しい制限措置を段階的に緩和し始めました。

 一方、米国は現地時間2月2日には中国からの渡航者受け入れを禁止しましたが、米国内の感染のほとんどは実は欧州由来のものでした。米国が英国を除く欧州からの渡航制限措置を取ったのは現地時間3月13日以降で、この間の失われた時間は壊滅的結果をもたらしました。

 ■社会的距離

 すべての国が、何らかの形で社会的距離を取るという方針を採用しました。インドはこの措置を厳格な形で行い、完全封鎖を実施しました。13億人の人口を抱えるこの国で、効果的な社会的距離をとることは難しかったはずです。

 対照的にスウェーデンでは、国民に人との距離を2メートル保つことを要請しましたが、日常生活の機能は維持しました。隣国スウェーデンと同様の質の高い医療体制が整っているデンマークは、より厳しい緊急措置を取り、スウェーデンよりもはるかに死者数を少なく抑えました。

 ■質の高い医療提供

 先進国は一般的に質の高い医療が提供されていますが、それだけでは不十分です。ドイツには国民健康保険があります。また、十分な数の集中治療室(ICU)病床があったことで、フランスとの国境近くにあるドイツの病院は、自国民に加え、フランスの患者も治療することができました。

 米国にも質の高い医療制度がありますが、国民健康保険はありません。収入が平均以下のアフリカ系アメリカ人とヒスパニック系のコミュニティでは、米国内で不釣り合いに高い割合でCOVID19による感染者や死者が発生してしまいました。

 ■感染者との接触追跡

 スマートフォンなどの新技術により、感染者と濃厚接触した人々の効率的な追跡が可能になりました。シンガポールやイスラエルなどの国では、こうした技術により感染率を抑えることに成功しましたが、同時に個人のプライバシー侵害についての懸念も高まりました。そこで、プライバシーが考慮されたアプリが導入され、人々はそれを介して症状を自己申告できるようになりました。英国などの国々では、AI(人工知能)を活用し、高い精度で、感染が発生する前にクラスター感染対策を準備することができました。

 ■検査

 広範囲に検査を行った国は、情報に基づいたより良い意思決定を行うことができました。ドイツと韓国は、積極的にPCR検査を広く実施し、国民に対しリスクを明確にすることで断固とした対処につなげました。米国と英国では検査体制の構築が遅れ、対策自体に影響を与えました。両国は検査の重要性を認識し、検査数を増やしました。

 日本は、こうした措置について、中間的な方針を取ってきました。現在、日本は感染拡大の段階から抜け出したようで、多くの国と比較すると影響は小さくなっています。3月下旬に症例が指数関数的に増加し始めたとき、私たちOIST研究者らは、緊急事態宣言が間に合うのか、完全封鎖をしないことで影響が出るのではと憂慮しました。

 幸いにもマスクの着用や、公共の場で距離を取るマナーなど、日本の文化的特徴のいくつかが有利に働いたようです。ただし、いくつかの厳しい教訓もあったように思います。日本における検査機能の欠乏が明らかになりました。またほとんどの都道府県で、ICU病床数を増やす必要があります。

 独立した感染症病院を造るよりも、すべての主要病院に感染症部門を置くほうが賢明でしょう。今回は感染拡大を免れた感はありますが、再び感染症が拡大する時期は必ず訪れるでしょう。警戒を怠らず、準備を整えておく必要があります。

(マヘッシュ・バンディOIST准教授)