【識者評論】与党過半数で辺野古反対に負託 江上能義琉大名誉教授


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江上 能義琉球大名誉教授

 新型コロナ禍の中で行われた県議選の最大の争点は、玉城県政の中間評価と辺野古新基地問題だった。与党が過半数を制したことは、玉城県政が県民から信任され、同時に引き続き、辺野古新基地建設反対の姿勢を貫くことを負託されたといえよう。これまでの度重なる選挙に加え、今回の県議選でも「辺野古NO」の与党側が勝利を収めた意義は大きい。

 玉城県政は、翁長県政から続く辺野古反対の県民の変わらぬ意思を背景に、その民意を無視して辺野古の埋め立て工事を続ける政府と対峙(たいじ)する。現在の安倍政権はコロナ対応や検察人事などを巡って支持率が大きく下がり末期症状を呈している。

 その不透明さや強引さ、隠蔽(いんぺい)体質を国民は特に問題視している。辺野古問題でも同様に、そうした政権の体質が反映されているように見える。玉城県政は辺野古を通してそれらの問題にもっと国民の注目が集まるよう努めるべきではないか。

 また6次振計に向けて富川副知事が率いるチームは「新沖縄発展戦略」を4月に提言した。だが、これまで50年続いた沖縄振興計画をこれからも続ける必要があるのか、日本政府内に異論が少なくない。説得力ある論陣を玉城県政は周到に準備して県議会で議論すべきであろう。沖縄の観光業はコロナ禍で大きな打撃を受けた。突発的な外部要因に左右されない産業を育成することも不可欠である。

 最後に、首里城復元は県民の宿願である。だがある与党候補者が選挙公約として訴えたように、負の遺産である地下の日本軍司令部壕を保存公開した上で首里城を復元すべきであるという意見は、平和教育の観点からも傾聴に値する。

 数多くの難題を抱える玉城県政だが、県民の心に寄り添った丁寧な施策と議論を期待したい。
 (政治学)