憲法53条に基づく野党議員からの臨時国会召集に、3カ月以上も応じないのは憲法違反か否か―。安倍内閣の政治姿勢を問う裁判の判決が10日、那覇地裁で下された。原告の訴えは棄却されたが、臨時国会召集を巡る初の司法判断となった。原告側からは「安倍内閣の違法性に踏み込んでほしかった」との声がある一方で「画期的判決だ」と、一定の評価が上がった。
「53条の判断の趣旨や目的を(司法が)初めて判断した。非常に意義がある」。原告側弁護団の小口幸人弁護士は同日午後、県庁の会見で成果を強調した。那覇地裁の判決では、安倍内閣の損害賠償義務を否定し、臨時国会召集を巡る安倍内閣の対応について判断を避けた。一方で臨時国会召集そのものを「政治的義務」と明言した。
小口弁護士は「もう少し踏み込めば、憲法違反だと判断する裁判官も出てくる」と指摘する。会見に同席した糸数慶子氏は「一歩進んだ結論が出た」と評価した。
照屋寛徳衆院議員は「請求棄却ではあるが、画期的な判決だ」とし、伊波洋一参院議員は「臨時国会召集要求に、内閣が応じる憲法上の義務があると認めた意義は大きい」とそれぞれコメントを寄せた。
赤嶺政賢衆院議員は「野党の臨時国会召集要求に応じず、疑惑隠しの冒頭解散にふみきったことについて憲法上の判断を避けたことは到底認められない」とする。一方で「判決は(臨時国会召集の)要求に応じる憲法上の義務を認め、内閣の裁量の余地は極めて乏しいとしている。政府はこの指摘を重く受け止めるべきだ」と強調した。
菅義偉官房長官は同日の会見で訴訟について「国の主張が裁判所に認められた」と受け止めを語った。臨時国会を3カ月以上召集しなかった対応の妥当性を問われ「判決が確定しておらず、それ以上のコメントは政府として控える」と述べるにとどめた。