7日、投開票が行われた県議選では、県政与党が25議席を獲得して過半数を維持することになった。翁長雄志前知事の路線を継承し、辺野古新基地建設反対の姿勢を鮮明にする玉城デニー知事の県政が信任されたということだ。にもかかわらず、与党が弱気なのが不思議だ。
〈沖縄県議選の大勢が判明した8日未明、玉城デニー知事の表情は険しかった。与党が議席を減らし、野党が議席を伸ばした原因を問われると、力なく語った。「選挙前に予想していたこととはかなり状況が違っていた」/自身の県政運営に対して「中間評価」と位置付けられていた今県議選。玉城知事は与党勢力の過半数死守に奔走した。与党は、沖縄市区を含む国頭郡、宜野湾市、宮古島市の4選挙区を「重点地区」に位置付け、積極的に知事を応援に招くなどのてこ入れを図ったが、沖縄市区の玉城満氏のほか、宜野湾市や島尻・南城市区などで計4人の現職が落選。前回県議選で積み上げた27議席は25に減り、与党内からは「事実上の負けだ」との落胆が広がった〉(9日本紙)。
「事実上の負けだ」という認識を与党関係者がしているので、中央政府につけ込む隙を与えてしまった。中央政府は今回の県議選を「勝利」と勘違いしている。
〈菅義偉官房長官は8日午前の会見で、7日に投開票された沖縄県議会議員選挙で米軍普天間飛行場の辺野古移設容認を掲げた自民党が議席を増やしたことに触れ「そうしたこと(辺野古移設)についてかなり理解が進んでいるのではないか」と述べ、辺野古移設に対する県民の理解が広まったとの認識を示した。一方、辺野古移設反対派が多数を占めていることを踏まえ「政府としては一つ一つ丁寧に説明しながら、辺野古移設を前に進めたい」と述べ、移設工事を続行する考えを示した〉(8日本紙電子版)。
菅氏は、辺野古新基地建設を進めたいという強い気持ちがあるために沖縄の現実が見えなくなっている。
今回、沖縄の自民党は、辺野古移設を容認するとの姿勢を明確にした。過去、辺野古移設問題を争点から隠していたのと比べると正直になった。中央政府と東京の自民党からのてこ入れで、建設業などの関連業界を締め付ければ勝利できるという目算が沖縄の自民にあったのだと思う。しかし、そうはならなかった。
また、野党の公明党は、米海兵隊普天間飛行場の県外か国外への移設を主張している。中央政府が建設を今よりも強硬に進めようとすると、沖縄の自民党と公明党の間に亀裂が走る。さらにそれは、中央の自公協力体制にも影響を与える。中央政府として辺野古新基地建設については、進むことも退くこともできないという状況に置かれている。
新型コロナウイルスによる危機が続いている中で、現在は与党も野党も政争にエネルギーを費やすべきではない。財産もなく収入もない人々の生活と沖縄の経済システムを守るために県と議会が協力して、県民本位の政治を進めるべきだ。(作家・元外務省主任分析官)