北谷町上勢頭の米軍基地返還跡地で地中からダイオキシンを含む廃棄物が発見された問題で、町と沖縄防衛局は補償について協議を重ねてきた。インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表が防衛局から入手した資料で協議の経過が読み取れる。ただ、補償を巡る具体的な協議内容はほとんど黒塗りで、開示しなかった。県民の目にさらされない「密室」で施策を決めている側面が浮き彫りとなった。
町と局の協議録には「補償スキーム」「土地買い取りマニュアル」などの単語が記されている。何らかの対応方針や目安を定めようとしているとみられるが、具体的な内容は明らかになっていない。
町が1件の買い取りを決めた際、担当者は「居住できなくなり実害があることから、緊急性が高いと判断した」とあくまで特別な措置だと説明した。同じように廃棄物が混ざっている土地で、別の地権者の不利益については「防衛局に対応するよう求めている」と強調していた。
2017年8月に町と防衛局が協議した会議の記録には「廃棄物などの調査結果と対応方針(補償など)について町に説明」と書いているが、後半は全て黒塗りになっている。前半は調査結果について話し合っており、後半の黒塗りの部分に補償に関する記載があるとみられる。
補償について協議が本格化したとみられる18年秋ごろから最新の19年末まで、会議の日時・場所や出席者、概要を除き議論の詳細は全て黒塗りだ。防衛局は非開示にした理由について「公にすることで率直な意見交換や意思決定の中立性が損なわれる恐れがある」と説明した。
◆情報公開請求した河村雅美氏の談話
嘉手納基地跡地の私有地から廃棄物が見つかった件では、情報が北谷町の議会答弁などに限られていた。しかし沖縄防衛局側の文書から、報道されている1人の「例外的」な話ではなかったことが明らかになった。この文書は防衛局側の記録であることを差し引いて読む必要があるが、地権者の憤りや、声の出しづらさなどを読み取ることができる。「例外」案件ではなく、跡地対策のシステムとしての解決方法を見いだせなかったことに関して検証が必要だ。
町と防衛局の協議に関しては、早い段階から補償の部分は非開示になっており、この1年間の話し合いは町の意向も踏まえ防衛局は全面的に黒塗りにした。
米軍基地跡地引き渡し後の私有地で、汚染や廃棄物が出た時にどうするか、公金をどう使用するか、という大きな問題の解決過程を、ここまで不透明に行うのは問題だ。行政に対する市民の信頼は失われることになる。
また、これは地権者の話だけではない。町と防衛局が調査結果を発表する前に、結果の出し方について調整も行われている。このような問題が発生した時の国と市町村、市民の関係について、県民共通の問題として考える必要がある。
(インフォームド・パブリック・プロジェクト代表)